論文研修会(情報を正確に伝える構造)
SRA Advent Calendar 2019 17日目の記事です。
論文をはじめとする技術文書はパラグラフライティングが基本です。パラグラフライティングの作法 -書き手にもメリットのある文配置ルール- によると、
パラグラフライティングは,文章のまとまりを作るルールと,各まとまりの中での文の配置のルールに則って文を書く方法です.そのルールを簡単に言えば,「共通の話題で括れる内容は一つのまとまりとする」というものと,「各まとまりの先頭には最も重要な文を置き,それ以後にはその文の補足説明のための文を置く
というものです。これはパラグラフ(段落)だけでなく、文章全体も同じような構造になっています。いわゆる起承転結と違い、結果を先に示した上で詳細を説明します。
このような構造はドラマ「刑事コロンボ」や円蔵師匠の落語、最近ではドラマ「時効警察」の一部でもそのような構造になっています。先に結果を示すことで結果に至る過程を楽しむことができます。
論文の構成は基本的に以下のような構成になっていて、随所で要点と全体の見通しが示され、情報が正確に伝わるようにガイドします。
あらまし
論文で何を提案するか、評価の結果、その価値などアピールする点を説明します。
はじめに
対象とする問題とその一般的な意味を説明します(これは問題設定と呼ばれます)。そして最後に論文の構成を示します。
関連研究
この章でどのような関連研究を示すかを述べた後、関連研究の説明をします。この説明は一般にどういわれているかではありません。提案の扱う問題と解決手法がこれまでどこまで行われ、提案する手法以外では解決されていないこと、いわゆる新規性を示します。
提案手法、評価方法、結果、考察
これらも先に構造を示すと、見通しが良くなり読みやすくなります。また、それぞれの説明の中で互いの関係を示すと内容をよく理解してもらえるでしょう。
おわりに
論文で提案した内容とその効果、将来展望と課題を示します。
あらまし、はじめに、おわりに、は同じような内容です。それぞれの位置づけに合わせて、どこを詳しく書くかが異なるだけです。
正確に情報が伝わるように
論文を読みなれている人は、あらまし、はじめに、おわりに、結論の順に読んで論文の主張を理解した上で、他の章を読み出します。これらの内容に一貫性があり、さらにほかの章が論文の適切なアピールに役立っているなら、読者はきちんと評価してくれるでしょう。
逆に、各章や全体の見通しが悪かったり、話がずれていると、素晴らしい成果であっても読者は理解できないでしょう。論文はある問題に対する解決法を提案するものであって、それ以外の情報は要りません。書かないといけないものを書くのであって、書きたいことを書くのではありません。
このことは論文だけではありません。技術文章をはじめ、お客様への提案賞など、仕事にかかわる文章すべてが同じです。要点を絞り、結論と全体像を示せは、情報を正しく伝えることができるでしょう。
最終回に続く
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