「深層学習の概要とドメインモデル」に参加してエモーションチップを考える
もっとも印象的だったのは、以下の言葉です。
適切に学習すれば、有限個のニューロンで任意の連続関数を近似できる
(universal approximation)
いつもお世話になっているIT勉強宴会で深層学習(ディープラーニング)のお話を聞いてきました(幹事の佐野さんが深層学習の概要とドメインモデル<第53回IT勉強宴会>に詳しくまとめられています)。ここでは、個人的な感想をまとめます。
ニューロンは判断するもの
深層学習の基本であるニューラルネットはは多層のニューロンから構成されます。このニューロンというのは「脳神経系における情報伝達を模した数学モデル」で、しきい値を超えると発火する、いわば入力に対する判断機構です。
ニューロンは20世紀からある技術で、ソフトウェア障害の有無などの判断をする論文などもありました。しかし、他の統計的手法がよく使われているのは、ご存じの通りです。
多層化による能力向上
その後、技術の発展や計算機能力の向上などでニューラルネットを多層化できる様になりました。ここで出てきたのが、初めに挙げた言葉です。
ニューロンを組み合わせれば何でも判断できる。そんな夢が広がりました。しかし、現実は厳しく、精度があまり上がりませんでした。
フレームワークの発展
近年の深層学習の話題を見ているとスゴいものばかりで、なぜだろうと思っていました。それらは、ニューラルネットの層に意味を持たせたり、途中で分岐したりと、より人間の脳に近づく事で精度が上がったそうです。
SF好きの私などは、より人間の脳に近づけばいつか人間の様に意識を持つのかと期待してしまいます。しかし、そこで障壁となるのが最初の言葉です。あくまで近似なのです。
機械学習あるいはデータ少尉の限界
新スタートレック(TNG)に出てくるデータ少尉を見ていると、機械学習の限界を感じさせます。人間と共に宇宙船の士官として働き、頭脳明晰、記憶や情報検索にすぐれ、技術を組み合わせた新しい提案や、過去の音楽家の味付けをして演奏する事が可能です。
しかし、友人がいても、悲しみや喜び、愛情を感じる事はありません。大切な人を失っても「何かが抜けたような」認識を持つだけです。仲間を作ったり、敵と戦うなど、本能的な能力が必要なのでしょう。
実はデータ少尉には兄がいてエモーションチップによる感情を持っています。しかし、性格が悪く失敗した様です。
おわりに
深層学習の発展によって人間の能力を超えるものが作られるかも知れません。しかし、それは人間が求めるゴールを実現するためのもので、ゴールを設定して深層学習の構造を作るのは人間です。
深層学習が話題になり出した頃、データを大量に突っ込めば答えを出してくれる様に勘違いしていました。でも、そんなうまい話は無く、良いものにするには人間の力が必要です。
エモーションチップが実現できるかどうかはわかりませんが、システムを作るのは常に人間です(今のところ)。ソフトウェアに関わるものとして、深層学習を野次馬的に眺めたり、変に恐れたりせず、ふさわしい場面があれば、ぜひ利用したいと思いました。
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