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支援者としてのリーダー - 「リーダーシップ3.0」を読んで -

年末にサーバントリーダーシップ私論を書いたばかりですが、サーバントリーダーシップにも触れている書籍「 リーダーシップ3.0」の感想を書きます。

書籍「 リーダーシップ3.0」は、日本人がサーバントリーダーシップと聞いた際のイメージよりも、私の期待するサーバントリーダーシップのイメージに近いと思いました。

支援者としてのリーダーが求められている

リーダーシップはその時代に応じて求められることが変化してきました。かつては中央集権的な強い権力者が求められ、やがて限界に達して分権され、さらに変化に対応できなくなったので調整者が求められました。しかし、従業員に優しい企業はスタッフ部門の肥大化や内向きに働くなどの問題を生みました。

やがて、なまぬるいリーダーシップを否定によって、大胆に行動するカリスマ性を持つ変革者のリーダーが求められました。しかし、これにも個人に依存するという問題がありました。また、組織の一体化や確信への過剰な圧力を感じて人々は疲弊していきました。 

そして、新しいリーダー像が求められるようになりました。 

求められるリーダー像

このような流れの中で、コミットメント(約束)からエンゲージメント(絆)が重視される様になりました。ドライな人事をしているとライバル会社に技術者がながれるなど、良くないことが起こるからです。

そのような中、コンピテンシー(ある仕事を行う際に、高い成果を上げる人に共通に観察される指向・行動特性)が注目される様になりました。スキルや知識だけでなく、「良好な対人関係の構築力」「高い感受性」「信念の強さ」などが重視される様になりました。

社会的にも、リーマンショック、エンロン事件、ワールドコム事件などから、金儲け主義への嫌悪感が生まれ、「持続可能な人と人、人と自然の調和への道」が重視されました。

さらに、東日本大震災意と原子力発電所事件から、他者への配慮、秩序、忍耐、謙譲、献身、などが再認識されるようになりました。

リーダーシップ3.0*

リーダーシップ3.0はこのように書かれています。

「組織全体に働きかけ、ミッションやビジョンを共有し、コミュニティ意識を涵養(かんよう)させると同時に個人個人とも向き合い、オープンにコミュニケーションを取り、働きかけて、組織や個人の主体性、自律性を引き出す。組織全体をそのような「場」としてとらえるのである。」

このように直接/組織階層を通して、ステークフォルダーとコラボレーションを促すことで、支援によってリーダーシップを発揮します。このようなリーダーシップ3.0の具体例モデルとして、サーバントリーダーシップなど多くのモデルが示されています。

リーダーシップ3.0は支援によって個人個人の自律を引き出すことで、 企業生き残りの鍵である新たな価値創造を可能にします。

リーダーはロールではない

このようなリーダーは、マネージャとも異なります。

「マネージャとは、組織上の役割、すなわちフォーマルな階層に基づいて機能する。」より上位からの指示を受け、計画を立て、予算化し、下位に指示する事で問題を解決します。いつ、どのようにを考えて、組織上の役割をこなします。

これに対して、「リーダーとは、組織、社会を正しい方向に導く存在である。(中略)正しいかどうかは時と共に変化する(中略)勇気を持って、リスクを背負って方向転換することが求められる。」メンバーたちを鼓舞して巻き込んでいきながら、そういった変革を実践するものです。

中年の危機

発達心理学では40代前半に「中年の危機」という言葉があるそうです。「今までのやり方、あり方が通用しなくなり、違和感を覚え、達成感や成果が得られなくなる時期」だそうです。体力や能力の限界が訪れて、若い頃の理想が実現できなくなり、限界を感じるとのこと。

これは「別の方法の模索、新たな能力の発見、価値観・世界観の変化、新しい人生を生きるチャンスでもある」とされています。必ずしも中年でなくても良いと思いますが、自分の能力を超えた成果が必要ならそれは「中年の危機」と同じだと思います。その際に、リーダーシップ3.0は新たな可能性を示してくれると思います。

もちろん、このようなリーダーは、まず自分に対するリーダーでなくてはならず、 自律が求められます。「「自律」意識を持ち、「自律」的に人生を切り開いていこうとする人だけが、成果を上げ、評価され、思うような仕事をして人生を送っている。」とされ、意思、覚悟が必要だとされています。

感想

多くの文献や事例からリーダーシップについて説明されていて、興味深く読みました。その有り様は、パターンやプラクティスをまとめる際に用いられるようなナビゲーションマップのようで、全体がわかり易く表現されていると思いました。

プロセスは選択的なタスクの集合であって、リーダーにも必要に応じて様々な対応が求められます。単純にこうすれば良いというのではなく、様々な方法が示されているこの本は、現状の立場に甘んじないで日々考えて行動する人に大いに参考になると思います。

また近年、うつ病が増える背景にこれまでのリーダーシップの問題があったとも思いました。同じ仕事をするにも、義務感からやらされ感を感じるか、前向きに助け合うかで心理的に大きく変わるのではないでしょうか。

これはリーダーも同じで、上司から命令されて一人で責任を抱え込んでいると、同じ様に部下をムチでたたいてでもなんとかしたくなるでしょう。しかし、リーダーシップ3.0を踏まえたリーダーなら、より良い環境を構築できる様に行動するのではないでしょうか?

メンバーや状況によって、必ずしも理想どおりにいくとは限りませんが、より良いリーダーシップがなければ、より良い未来は切り開けません。その際に書籍「リーダーシップ3.0」は大いに役立つと思います(求められるリーダー像と羊飼い型リーダーシップ - 続「リーダーシップ3.0」を読んで -につづく)。

*リーダーシップ3.0は株式会社経営者JPの登録商標です。

 

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