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[#benkyoenkai] 古くて新しいサーバントリーダシップ

IT勉強宴会でビールを片手にLTをしてきました。

サーバントリーダーシップには多くの誤解があります(サーバントは革命の言葉。ビジョンを示せ! - サーバントリーダシップ私論 -)。日本人には理解が難しいのかもしれません。

サーバントリーダシップの本を読むとキリスト教的な内容が多く出てきます。とはいえ、酒の席で宗教と人種の話は御法度ですので、文献として聖書を引用しながら私的な解説をしました。

一人称としての僕

サーバントの意味である僕(しもべ)という表現が一人称でいつから使われているかを調べると、なんと1800年前のアブラハムに息子イサクの誕生を予言されるところまでさかのぼります。

この場面はアブラハムの宗教(Wikipedia)と言われる3宗教の分岐点です。ユダヤ教、キリスト教のルーツはこのイサクで、イサクの前に召使いとの間に生まれたイシュマルがイスラム教のルーツと言われています。

この神に対する僕という概念が、平等主義につながって革命が起こり、日本では天皇(帝:みかど)に対する僕(ぼく)という一人称になり、明治維新に繋がったのは前回書いたとおりです。

いにしえのサーバントリーダーシップ

リーダーシップをとる人が自らを僕とする有名な言葉では、サムエルの「僕(しもべ)は聞いております」(サムエル記上3・9)というひと言です。サムエルはユダヤの預言者・指導者ですが、神様に向かって僕と言っています。これは紀元前11世紀頃のようです。

よりサーバントリーダーシップ的な表現は、新約聖書の「上に立つ人は、仕える者のようになりなさい」(ルカによる福音書 22・26 )です。イエス・キリストの言葉とされていますので西暦30年頃になります。

この言葉はカトリックの叙階式を画像検索すると、教会の指導者がうつぶせになって体現されているのがわかります。以前、海外のサーバントリーダシップの説明でスクラムマスターがうつぶせになっている写真が紹介された事がありますが、この辺りを知っていて悪ふざけしていたのでしょう。

サーバントリーダーシップとは

さて、日本サーバント・リーダーシップ協会によれば、サーバントリーダーシップはロバート・グリーンリーフ氏(1904~1990)が1970年に提唱した「リーダーである人は、まず相手に奉仕し、その後相手を導くものである」というリーダーシップ哲学だそうです。

サーバントリーダーは、奉仕や支援を通じて、 周囲から信頼を得て、主体的に協力してもらえる状況を作り出すとされ、サーバントリーダーシップの10の特性として、傾聴、共感、癒し、気づき、納得、概念化、先見力、執事役、人々 の成長への関与、コミュニティづくりが挙げられています。

特に グリーンリーフ氏の「リーダーがするべき最も重要な選択は、奉仕することだ。それがなければ、人々をリードする能力は恐ろしく限定されたものになる」という言葉は、サーバントリーダシップの可能性を良く表しています。

コマンドコントロールにより成立するトップダウンな組織では、言われた事しか実施せず、自己中心的になりがちです。これに対してサーバントリーダシップによれば自律的な組織が実現でき、工夫してやり遂げようとしますので、組織の能力を最大限に発揮できる可能性があります。

サーバントリーダーシップの前提

とても魅力的なサーバントリーダーシップですが、単にリーダーだけが変わってもうまくいくと思えません。自律的な行動を組織に促してもメンバーが自主的・主体的な行動をしてくれなければ、仕事が進まないからです。

2015年に大活躍したラグビー日本代表のエディヘッドコーチは、選手に自主的・主体的な行動をうながすことで、大きな成果をだしました。そのために五郎丸選手が失敗した後に書けてきた電話に出ないなど、自分で考える様に仕向ける様々な工夫をされていたそうです。

積極的なラグビーの選手でさえそうなのですから、コマンドコントロールに慣れた開発者では簡単にはいかないような気がします。

文化の違い

特にキリスト教にはタレント(能力)の語源になった「タラントンのたとえ」(マタイ福音書25章)といって、神様からあずかったタラントン(お金の単位)を増やさなかった人間が天国から追い出されるお話があります。そんな話を「嘘をつくとエンマ様に舌を抜かれる」のように聞かされていれば、(日本人が正直な程度には)自然とそれぞれの能力を発揮しようとするでしょう。

そのような文化を持つ欧米で生まれ、サーバントリーダーシップで効果を出しているといえるアジャイル開発においても「誰もがこの働き方を気に入るわけじゃない」(アジャイルサムライ, p. 7)と、責任を持って価値ある成果を届けることを誰もが好まないとされていて、常にうまくいかない事が示されています。

日本でもアジャイル開発では、初回はうまくいっても続かなかったり、業界が大きくなると難しく、コーチを雇わないとうまくいかないという話も聞きます。特に日本ではサーバントリーダーシップを根付かせるのはなかなか難しいのかも知れません。

問題を見いだして文化を変えよう

そもそもサーバントリーダーシップが必要であるか、よく見極める必要があります。

上に書いた様にサーバントリーダーシップを実践するには、メンバーが自主的・主体的である必要があります。組織にもよりますが、まずは文化を変えて根付かせなければなりません。(チケット駆動開発の相談を受けた時にも言うのですが)イメージできないのであれば、強引に導入してはいけないと思います。

ただし、トップによるコマンドコントロールが限界に近づいているなら、サーバントリーダシップの実践から逃れる事は難しいでしょう。必要に応じて、コーチを依頼してでもアジャイル開発の案件を徐々に広める、チケット駆動開発の導入を通じて徐々に文化を変えていく、など時間をかけて文化を変えていく必要があるでしょう。

(チケット駆動開発は期待する文化に応じて運用を変えることができます。書籍「チケット駆動開発」12章「チケット駆動開発のテーラリング」が参考になると思います。)

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