チームを守り育てる - セクシーな中間管理職 -
中間管理職の悲哀という昇進を避けたくなるような言葉がありますが、中間管理職はチームを守り、育てることができるセクシーな仕事です。
負債的管理職
管理職としては組織の目標にあった実現可能な計画を立案し、シンプルなメッセージを伝え、適切なメトリクスで管理することが、組織的な役目でしょう。
しかし、ただのイエスマンなら必要悪でしかなく、チームを強くする絶好のポジションをムダにした負債的管理職になってしまいます。
上司である中間管理職がイエスマンなら、部下にもイエスマンが伝搬し、怒られない様に、部下に強制し、悪い事を隠し、ごまかします。負債的管理職によって考えない組織ができてしまうのです。
しかし、上司である中間管理職がそのポジションを活かしたなら、チームは活性化し、考え、助け合い、提案する、より強い組織になるでしょう。
中間管理職というポジションを活かす
中間管理職はトップダウンの中間であると共に、ボトムアップの中間でもあります。下から上にアプローチすることで、チームは守られ、能力を発揮し、成長する事ができます。
(1) 情報収集
現地現物と言いますが、現場の中に入っていけるのは中間管理職の特権です。もちろん上の立場になってもお客様にご挨拶にうかがって別の情報を得る事ができますが、上の人間が現場に入り込むと中間管理職がやりにくくなってしまうので、やりにくいのです。
中間管理職は各メンバーの評価に関わるでしょうから、報告・説明が不十分だったり、他の情報と矛盾を感じる場合には、直接話す事ができます。また、飲み会やちょっとした機会を利用したインフォーマルな情報収集もできますので、うまく活用してください。
直接話す事で、担当者が見えていないだけか、 能力の問題か、報告しづらいのか、色々な問題が明確になるでしょう。
(2) 指導
コマンドコントロールで人を動かしていると、指示したとおりにならないと怒リたくなってしまいます。しかし、うまくいかないのは指導が不十分だったからですから、失敗したタイミングは指導のチャンスでしょう。
以前にも書いた様に、怒るな教えろだと思います。うまく指導するためのポイントは、怒りたくなるほど問題を大きくしない事です。
それには上に挙げたインフォーマルな情報収集や、問題を大きくしない様にチームを支援をすることも大切です。
(3) 支援
上の役職になるほど予算や人事の権限が増えますが、きめ細やかな対応が難しくなって、数字に頼る事しかできなくなります。中間管理職なら様々なアプローチが可能ですので、プロジェクトや組織の成功をコントロールできます。
作業指示ばかりしていると、部下はどうあるべきか、どうすべきかと考えてしまいがちです。逆に、上司である自分がどうあるべきか、何をできるか、を考えると色々と見えてくるでしょう。
たとえば経験が少ないリーダをアサインしたなら、協力会社の方にやりにくかったり気になる事があれば言ってくれる様にお願いすることもできます。また、リスクの高いプロジェクトなら、問題が起きた時の対策を検討して準備しておく事もできるでしょう。
(4) 組織の目
中間管理職が面白いのは、チームだけでなく組織が見える事です。下向きの行動だけでなく、上向きの行動も、企画し、タイミングを図り、アプローチする事ができます。
自分が上司だったら、何を期待し、現在の状況にどのように行動するか、を考えて、上司に協力を依頼します。
もちろん、組織の状況によっては他のプロジェクトを優先した方が良い場合もあるでしょう。でも、今ならいけるというタイミングを見極めて、このままだと大変な状況になることを説明してお願いするのです。
現場の状況と組織の状況が見える中間管理職だからできる動き方です。
ピーターの法則
能力のある人はどんどん出世するが、無能になった時点で出世が止まり、組織は無能な人間の集まりになる、と言われます。
しかし、ソフトウェア会社に関して言えば、中間管理職で無能になるのは、その位置づけや楽しさがわかっていないからではないでしょうか?
数値目標に追われて上司の顔色だけを見ていれば、どんな人も無能な行動しかできません。しかし、上に挙げた様に中間管理職でなければできない事がたくさんあり、直接、間接的な施策を実施して目標を達成するとてもセクシーな仕事だと思います。
おわりに
これまで、ウォーターフォール開発の問題としてサーバントリーダーシップについて色々書いていました。しかし、CMMを提唱したハンフリー氏の書籍にもあるように、チームの成功を実現するにはコマンドコントロールだけでは不十分です。
ここに挙げた行動ができない中間管理職が多いのは、見習うべき良い中間管理職がいなかったからかもしれません。
中間管理職ができる事は何か、何をするとうまくいくか、何を期待されているか、多くの中間管理職が部下に求める様に、考えて仕事をすれば、仕事はセクシーになり、組織は成長していくと思います。
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