標準プロセスに隠れたお化けと定量的な品質評価 - 優先席でのスマホ -
先日、優先席でスマートホンを触っているとスマートホンの電源を切る様に注意する男性がいました。「あぁ、知らないんだな」と思い、阪急電車では混雑時以外は切らなくて良い旨を説明しました(おまけ参照)。
怪訝そうな雰囲気なので、ペースメーカーをされているのかと思い「気になりますか?」と聞くと「阪急は知らんが優先席では切るものだ」とか言われます。ガサガサされるのが嫌なんだな、と思ってスマホを片付けました。
すると、その男性は調子に乗って、周りの人にも注意を初めました。その人たちに悪い事をしたと思いました。注意された人が少し引いているので、よく顔を見ると少し怖そうなおじさんでした。
男性は良い事をしているつもりなのでしょうけど、意味の無い事を押し付けるのは困り者です。でも、ルールというのは守るべきものですので、理由を考えないと形骸化してしまう危険性があるのだと思いました。
標準プロセスに隠れたお化け
ソフトウェア開発に目を向けると、標準プロセスにも同じような形骸化のお化けが隠れています。
標準プロセスは組織的に活動を統一し、組織全体で安定した開発と改善を進める土台となるものです。共通のプロセスが実現できれば、新しい技術の導入する際はテストプロジェクトの成果を容易に展開できます。
このような考え方はCMMで広く知られる様になりましたが、「レベル3で固まる」という事象が多く見受けられました。このレベル3は「定義されたプロセス」というもので、組織内で共通のプロセスが実践される様になり改善の土台ができたレベルです。
1990年代後半のCMMブームの頃に推進していた方達は、その危険性を踏まえて形骸化しない様に努力されていました。しかし、標準プロセスはルールなので、どうしても形骸化しやすいようでした。
形骸化のお化けが現れると、不十分ながらも工夫していた開発者はルールに従う事を強制されて考える事をやめてしまいます。逆に管理する側はルールに従わせるだけで力つき、本来の目的である改善を忘れてしまいます。
開発者も管理者もソフトウェアという技術を扱う「技術者」なのになぜそれが必要かを考えるのを忘れてしまい、いつの間にか「労働者」になってしまうのです。
技術者として「なぜか」を考える組織づくりが大切だと思います。
定量的な品質評価に関して
最近、定量的な品質評価に関して色々な議論がされていますが、個人的には愚痴るのは論外だと思っています。
多くの会社には標準プロセス(とお化け)が存在するのですから、契約前に確認するのがあたり前です。詳細は確認できないにしろ、開発者にどのような成果物やメトリクスが求められているかを確認すべきです。
ある程度の変更(テーラリング)が許されるなら調整してから契約すれば良いですし、合わないなら契約しなければ良いだけです。わかっていて契約をしたなら、受けた側の問題でしょう。
プロセスメトリクスも納品物の一つです。確認しないで見積もりなんてできません。
おまけ:優先席でのスマホ
優先席でスマートホンや携帯の電源を切る様に言われ出したのは、心臓ペースメーカーを誤動作させる危険性が報道されてからです。
阪急電車でも優先席での利用が禁止されましたが、あまり徹底されませんでした。そこで阪急では、電車の端の1両を携帯電話オフ車両として、車掌が注意するなど徹底を図りました。
その後、ペースメーカーへの影響が再調査されて影響を受けるのはごく一部かつ密着したときのみである事がわかり、携帯電話オフ車両を廃止し、混雑時のみ優先席で禁止する様に変わりました。
関西では相互乗り入れがあることから、混乱を避ける様に他社も同じルールで統一されているようです。
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