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現場の人が論文を書く際に気をつけたい事

久しぶりに論文を書きました。私の様に現場にいる人間が論文を書くとき、熱い気持ちで思いの丈を書き綴っていても論文は採択されません。それは論理的に整理しないといけないのに、複雑な要素が絡み合う現場にいるからです。

今回、論文を書く際に気をつけた事を以下にまとめておきます。

現場はリアル

現場で問題に思っているのは、目の前の出来事です。スゴいものを実現したからと論文風にまとめてもなかなか採録されません。お客様に認められているのですから、決してつまらないのということはありません。それをきれいに説明できないからです。

ついつい苦労した事や工夫した事を色々と書きたくなりますが、そのままでは論旨がわかりにくくなってしまいます。書きたい事を書くのではなく、報告する内容を明確にするように、書かないといけないことを書きます。

これは、論文の構成をオーソドックスにまとめる事でかなり改善します。論文風にまとめるのではなく、論文らしくします。具体的には広い話題から徐々に話題を絞っていく、ページ比率を予め決めて書いて詳細すぎる内容は付録にまわす、全体の論理構成を決めてから書く、段落は短過ぎず長過ぎない同程度の長さに揃える、ことで見通しが良くなります。

論文には有効性が求められますが、論理的な構造が明確でなくては伝わりません。読み手が求めている事は何かを考えて書くと良いと思います。

現場にはネタがいっぱい

書いている事がわかり易くなっても、問題設定が適切でなければ評価されません。現場には論文のネタがたくさんあり、その絞り方で論文の価値が決まります。

まずはアピールできる成果を絞って、その成果を裏返してみます。「XXができていないので、XXを実現した。」という論文を考えます。そして、XXはなぜ必要なのか?あるいは、XXができると、他に何か良い事が無いか?また、なぜ、今までなぜ無かったか?などを考えて説明を膨らまして、適切な場所に配置していきます。

初めに書きたい事を書いてからスリム化をしようとしてもうまくいきません。書きたい情報が多いのでそもそも論理的な構造になりにくいですし、ネタが多過ぎてポイントがぼやけるからです。あたりまえの内容は参考文献にまかせて、新規性に関わる内容だけに絞ってフォーカスをあてます。

現場の成果はあるユーザに役立つ成果物ですが、論文に書かれた成果には一般の人に役立つ新規性が必要です。そのような成果を見つけ出すことが論文の成否に繋がります。論文を書き出してからも概要がスッキリかけるような成果を追い続けると良いと思います。

現場に引用はあまり要らない

開発現場のドキュメントでも用語集を作ることもあり、言葉の定義は重要です。しかし、その根拠となる文献が詳細に示されている事は少ないでしょう。

現場では巨人の肩にのる必要はありませんので、輪講をしていたり、常に文献を探している人は少ないでしょう。このため、意識して書かないと引用が雑になってしまいます。

具体的には、論理の組み立てが荒く、本や論文の具体的な文章やページを示さずに引用するといった事はなるべく避けたいものです。また、そもそも参考文献が少ないのは、ほとんど全てがオリジナルだと言っているのですから、良い内容であってもあまり信頼されないでしょう。

現場は独自文化

多くの開発現場には独特の社内文化があり、一般的でない言葉が定義されている場合があります。だいたいの意味は同じでも使い方を限定していることもあります。議論の展開に必要な言葉は、きちんと引用するか定義して使いたいものです。

独自文化で育てられた技術は、なぜその技術が成り立つかをきちんと説明しないと、利用が難しいでしょう。しかし、ふだん使っている技術のどこが他社と違っているのは、考えるだけではわかりません。関連する文献を読んでおくことや、勉強会などで他社の人とお話しする機会を持つことが大切だと思います。

現場の数字が出せない

現場の数字、特に生産性や信頼性に関わる数字は表に出しにくいものです。許可を得る事が難しい場合は、相対値で示す、出しやすいプロジェクトのデータを選ぶなど、色々工夫をしてみましょう。

定量的に示さずに感想を書いても信頼できる情報にはなりません。論文を書く際に最初に乗り越えておくべき課題かも知れません。

おわりに

上述の様に現場で論文を書くことは、困難を伴います。しかし、現場の情報を出さないでおいて「ソフトウェア工学は役に立たない」とぼやいていても何も変わりません。

ソフトウェア開発はエンジニアリングそのものですから、そこで見つけた技術を共有し合えば、技術はもっと向上するはずです。これは自分たちだけのノウハウだなどといって隠し持っていても技術は陳腐化してしまうでしょう。

技術はGIVE and GIVEのつもりで、情報提供すれば自然とアイデアがもらえ、より洗練された技術になるでしょう。ぜひ、論文を書いて技術を磨きましょう。

おまけ

これまで何度か論文の書き方を書いてきましたが、大学の先生方が言われる書き方と大きく違います。これは、ここに書いたような問題があって素直に書いたのではうまく書けないからです。

これまでの記事はカテゴリ「論文の書き方」にまとめましたので、是非参考にしてください。


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