ランチェスターの法則と売り上げ、利益、利益率
年度末が近づいて、売り上げ、利益、利益率、といった数値が意識されるようになりました。色々と考えているうちに、ランチェスターの法則と組み合わせると良い組織運営ができるのではないかと思いました。
ランチェスターの法則
ランチェスターの法則(リンク先はWikipedia)は戦闘の数理モデルで、経営学では様々な分野に手を伸ばす強者戦略と、ニッチ市場を突く弱者戦略に応用されています(この弱者の戦略はパレートの法則や孫子の兵法に繋がるところがあり、人生の戦略や新しい技術の導入にも応用可能だと思います)。
よりわかり易い表現として、ジャンケンのグー・チョキ・パーで表現される事があります。つまり、弱者である導入時期は、ポイントを絞ってグーでグイグイ攻め、成長期には多方面にパーっと攻め、成熟期には効率の悪いところをチョキチョキします(グートパーの間に、徐々に広げる意味でチョキを挟む場合もある様です)。
売り上げ、利益、利益率
会社の経営目標は、売り上げ、利益、利益率で表現されますが、本当は何が重要だと思われますか?売上は達成したけれども利益と利益率が未達と、売上は未達だけれども利益と利益率が達成するのとどちらが良いのでしょうね。
ROA(総資産利益率)やPER(株価収益率)など利益に関する指標が多い事から、売上よりも利益が大切な事はわかります。しかし、それだったら利益だけで良いのではないかと疑問に思いました。
もし、シンプルな指標に統一できるなら、 アメーバ経営のようにゴールからメトリクスを決めることが可能で、効率的な組織運営ができるからです。
ランチェスターの法則と売り上げ、利益、利益率
そこで、ランチェスターの法則に当てはめてみると、今をどのような状況にあるかによって、中心の指標にすべきものがわかります。
(1) 導入期のグー戦略
弱者の戦略であるグー戦略は、ピンポイントにニッチなマーケットを攻めます。利益の達成が一番です。もし、利益を達成しているのに売り上げが未達なら、それは効率が良いと言えます。今後もその調子で無理のない範囲で売り上げを狙うべきでしょう。もし、売り上げが計画を超えているのに利益が未達なら、効率化できるような施策が必要でしょう。
(2) 成長期のパー戦略
強者の戦略であるパー戦略は、拡大戦略です。シェアを押さえないと勝てませんので、少々利益率を落としても売り上げを狙うべきでしょう。いわゆる品揃えや体力で勝負することになります。成長期には「損して得取れ」ということでしょう。
(3) 成熟期のチョキ戦略
成長期が終わって成熟期に入ると、拡大方針を見直す必要があります。安定した利益や次のビジネスに備えて、利益率を基準に優良なビジネスだけを残す必要があります。「赤字は罪」という松下幸之助氏の言葉が指針になると思います。
まとめ
売り上げ、利益、利益率は、区別せずにゴール設定されていないでしょうか。上に示したようにランチェスターの法則に割り当てると、現在の状況をどのように判断して、どのような戦略で経営を行いたいかによって、指標を選択できることがわかりました。このようなシンプルなゴールを示せれば、組織がよりねらった方向に向かうはずです。
また、企業の計画や業績を見る際にも、その狙いや状況の判断に使えると思います。拡大が期待できる時に利益率を重視していたり、そろそろ限界という時に売上拡大だけを狙っている様なら、注意した方が良いでしょうね。
これまで、ランチェスターの法則を単独で見ていた時は、あまり関係ない世界だと思っていました。しかし、売り上げ、利益、利益率に当てはめて考えると、経営とは戦略に合わせてゴールの指標を示す仕事だと思った次第です。
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