労務費からメトリクスを考える - IT勉強宴会に参加して -
第38回 IT勉強宴会in大阪は「中小企業の社長は何を考えているか」というテーマでした。簡単に言うと「なんぼもうかりますねん?」と常に資金繰りを考えていると理解しました。
お話の中で気になったのは、粗利益の考え方です。労務費を含めた粗利益を中小企業の社長さんに説明すると、労務費を入れると作業をしない人が出ると言われたそうです。
プロジェクトに最適化すると労務費を少なくしようとして、余っている人を有効に使おうとしないと言う事なのでしょう。ソフトウェア開発では労務費がほとんどを占めますので粗々(大まかな粗利)と言えども考えにくいですが、同時に稼働率を管理する事を考えると、その主旨は理解できます。
この労務費の扱いを聞いて思い出したのはアメーバ経営です。アメーバ経営ではGQMのようにゴールからメトリクスを決めます。
アメーバ経営では付加価値を示す時間あたりの採算(人件費を含まない)を用いて、「売り上げを最大に、経費を最小に」を実現します。ソフトウェア開発でも基本は同じはずです。
しかし、ソフトウェア開発ではプロジェクトの粗利(労務費含む)の最大化と稼働率の最大化という少し矛盾したメトリクスが管理されています。変な話です。
粗利を最大にするなら労務費を減ら減らせば良いのですが、稼働率を最大にしないと行けないので社員から使うことになります。常に社員は100%稼働していて、足らないところを協力会社に外注することになります。
大まかに考えると間違ってはいないのですが、稼働率が100%だと必要なアソビがなくなり、未来に向けての活動が難しくなります。会社が一定の投資を義務化するなどの対策が必要になってきます。そこまでトップダウンに決めないといけないのでしょうか?
2次会でお話をしていたところ「会社にとっては部門の利益が大切で、労務費が粗利に入っても入らなくても関係ない」というお話を聞きました。確かにそうです。稼働率まで会社が管理するのは、一種のマイクロマネジメントだと思いました。
メトリクスには2つあると思います。1つはゴールを示すために必要なもの、もう1つは監査的な管理に必要なもの、です。会社のゴールを達成するには、部門の利益だけをゴールとし、それ以外の監査的なメトリクスはトレーサビリティと部門内での自律的な管理に用いれば、うまくいくようになるのではないかと思いました。
会社が関与しないといけないのは、最低限の標準化、ゴールの達成に必要なリスク管理、部門間の全体最適、そして教育、だと思います。プロジェクトマネージメントと同じですね。
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