ボトルネックはお早めに! -- CCPMのワークショップに参加して TOCcafE@OSAKA -
CCPMのワークショップ、TOCcafE@OSAKA おりがみで学ぶチームワークを最強にするプロジェクトマネジメントを身につけるワークショップに参加しました。
目的とワーク
このワークショップの目的は「CCPMを実際にやってみる」です。実際のソフトウェア開発を短時間で実践できないので、折り紙のワークをCCPMのバッファ傾向グラフで管理しました。
バッファ傾向グラフは、X軸に進捗率、Y軸にバッファ消費率をとったもので、「TOC/CCPM標準ハンドブック―クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント入門」によれば
- (進捗率0%、バッファ消費率15%)-(進捗率100%、バッファ消費率75%)
- (進捗率0%、バッファ消費率30%)-(進捗率100%、バッファ消費率90%)
の2本の線が引いてあります。ここに、ワークの進捗とバッファの状況をプロットしていきます。
ワークは4種類の折り紙を5つずつ作るというもので、10分のイテレーションを2回と10分のバッファの1回を実施しました。
ワークの状況
最初の10分間のワークで、4つのワークのうち3つは 1.6-1.8個完成しましたが、1つのワークが10分でも終わらず、0.9個という状況でした。進捗は完成品だけを数えますのでバッファを除いて半分が過ぎた時点で進捗は15%でした。
ここで各チームの状況確認と増員が必要かどうかの確認が行われました。難しいワークは10分でもできていませんでしたので、増員をお願いしました。
5人体制になっても、簡単な折り紙の進捗は進みましたが難しい折り紙は2.7個しかできていませんでした。そこで、難しい折り紙を3人体制にしてリカバリを図り、最終的になんとかおさまりました。
良かった事
やはり見える化は強力です。バッファ傾向グラフでどんなに頑張っても間に合わない事が明確になって増員をお願いしました。増員していないチームでもチーム内で助け合いましたし、早く終わったチームの人たちは遅れているチームを助けていました。
制約論値(TOC)に基づくCCPMでは、単位時間あたりのリソースとスコープはそのままにデリバリータイム(完了日)が変化します。ボトルネックになっている作業を支援する事で、デリバリータイムを短縮できるように調整します。
今回のワークは作業に順序の依存関係がなかったので、単純にボトルネックに対してリソースを集中させる事ができました。シンプルに実施できたので、より明確に助け合う状況が作れたと思います。
課題
その一方で課題もあったと思います。
- 作業に対してイテレーションが短いので、増員の要否を決める際に仕掛り分の考慮が必要だった
- 折り紙が得意な人とそうでない人の生産性が大きく異なり、それがチーム毎の差になっていた
- 折り紙毎に必要な作業時間が大きく異なり、わたしのチームでは手分けして作業を始めたのでリカバリがうまくいかなかった
- 折り紙の手順書が難しかった
ヒント
解決法までには至っていませんが、今後のヒントがありました。
- 折り紙の手順を考慮して進捗報告すればより現実を把握できたかもしれません。反面、完成品のみを数える事で遅れがより明確になるというメリットもありました
- 作業者が見積もりをしていないので、理想見積もりになっていませんでした。より正確な見積もりができれば、もっと効率を上げる事ができたかもしれません
- ボトルネックは積極的に攻めるべきでした。ナップザック問題の簡便な解決法は大きな荷物から詰め込む事です(プロセスのムダを取る3つの方法)。最初からボトルネックにリソースをつぎ込めば、作業完了にばらつきが出なかったと思います。
- 最後になって気付いたのは、手順書を見ないで一緒に折り紙を折ると明らかに生産性が向上しました。ペアの作業は文書のボトルネックを無くす効果もあるという事でしょう。
ワークショップの善し悪し
正直なところ、わたしはワークショップは苦手です。ワークショップは、
- ノイズが少なく
- ポイントを絞り
- 雰囲気を共有できる
という長所がある反面、
- 現場と異なる
- 知識が局所的、一面的
- わかった気になること、仲良しクラブになりがち
という欠点があると思います。
つまり、うまくいけば理解の壁を越えられる反面、時間がかかる割に得るものが少ないと思っています。
今回の場合、TOC/TOCfE、ザ・ゴール コミック版
で基本的な知識を得ていたので、具体的なイメージや全体の関係性がよくわかりました。特に、うまくいかなかったプロジェクトにあたったので、上に挙げた課題を実感できました。現場で実践する際は失敗できないので、失敗して学ぶ事ができたのはラッキーでした。
おわりに
TOC/TOCfEの勉強会に出ていて、ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何かに感動したというお話を良く聞きましたが、ザ・ゴール コミック版
を読んでようやくその意味が分かると共に、わたしも感動しました。
今回のワークショップでは、エクセルを用いた簡単なツールでそれを体感でき、しかも失敗して、より理解を深める事ができました。
これは、講師の水野さんや主催者の井上さんが、ポイントを絞って環境を用意していただいたおかげだと思います。本当にありがとうございました。
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