[#TiDD] アジャイル開発のバリエーションからチケット駆動開発を考える
前回はアジャイル宣言を実現するものの一つとしてFDDを取り上げ、アジャイル開発のプラクティスを従来型の開発の取り入れたハイブリッドアジャイル開発について考えてみました。今回はこれを元にチケット駆動開発のバリエーションに付いて考えます。
基本的な組合せは2種類
ソフトウェア開発はその対象や開発組織によってふさわしいプロセスが異なります。ベーム先生は「アジャイルと規律」の2章のまとめとして5つの重要要因として、人(の技術力)、変化の度合い、(自由な)文化、規模、重要度、を挙げ、これらを分析して、ふさわしいプロセスを構築すべきだとしました。
その方法はいずれかを選ぶか、カスタマイズするかです。「ハイブリッドアジャイルの実践」にあるインクリメンタルのハイブリッドと同じ様に計画駆動の要素をアジャイル開発に入れてスケールアップするか、単一リリースのハイブリッドアジャイルの様にアジャイル開発の要素を計画駆動に入れるかです。
これらは両書に共通する方法ですが、チケット駆動開発を考慮するとさらにバリエーションを増やす事ができます。
チケット駆動開発のバリエーション
「ハイブリッドアジャイルの実践」にはチケットによるタスク管理についても書かれています。作業階層では、ステージ、イテレーション、ストーリー、タスク、のチケットにわかれ、分類としては、設計タスク、開発タスク、テストケース、バグ、変更要望、環境整備作業、日次ルーチンワーク、その他、があります。
このようなチケットの運用からハイブリッドアジャイルの目指すプロセスがわかります。工程名のチケットがアンチパターンである3つの理由で述べた様に期間を表すチケットは変更に弱いので、作業が明確で変更が少ないことがわかります。また、作業中に見つかったチケットは追加されるとされていますのでチケットの自由度は高いと思われますが、その目的は“作業進捗の「見える化」”(P.109)のようです。
このような方法はFDDやハイブリッドアジャイルの様に、変動が一定の比率に納まる場合に有効です。その反面、開発者の自由な発想で、発見、発明、工夫が求められる場合にはあまり向いていないでしょう。
自由な発想を必要とする場合は、予定が大きく変わりますのでチケットのエクセル連携は工事進行基準と相性が悪いに書いた様に、そのまま進捗管理の情報にする事が難しいので、組織パターンを応用して門番をおいて情報を変換すると良いでしょう。このような場合は、チケット駆動開発をプロジェクト管理の視点だけで考えてはいけないのです。
このほかにもハイブリッドアジャイルはゆとりのある計画(p.117)を立てて変化を受け入れますが、スクラムなどでは理想見積もりで計画しておいてあふれた作業はあきらめます。このような違いもチケットのの記載内容に差が出るでしょう。
ふさわしいプロセスがプロダクトをより良くする
書籍「チケット駆動開発」12章のテーラリングガイドに書いた様に、 ここに挙げた以外にもチケット駆動開発のバリエーションはたくさんあります。プロジェクトの開発対象、人、組織、など様々な条件にふさわしいプロセスが構築可能です。
「良いプロセスが良いプロダクトを生む」とは限りませんが、「ふさわしいプロセスがプロダクトをより良くする」と思います。
おまけ
上記のような特徴のほか、チケット駆動開発を現場の道具として使うなら、開発のメトリクスを容易に、リアルタイムに、より正確に集める事ができます。
【告知】第10回 RxTstudy/第57回 SEA関西プロセス分科会
テーマ:「チケット駆動開発とメトリクス」
http://kokucheese.com/event/index/156953/
書籍「チケット&計測でITプロジェクト運営の体質改善」著者の神谷芳樹さん、 NTTデータの大杉直樹さんをお招きして、「チケット駆動開発とメトリクス」と題した勉強会をSEA関西とRxTstudyで共催します。
IPAで開発されたEPM-Xのお話や開発現場での事例を聞く事ができるほか、パネルディスカッションも予定しています。滅多にない企画ですので、ぜひ皆様ご参加ください。
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