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「ソフトを他人に作らせる日本、 自分で作る米国」を読んで

第30回 IT勉強宴会は、「動かないコンピュータ」なども書かれた著者の谷島さんをゲストに、「【ソフトを他人に作らせる日本、自分で作る米国】を語ろう」と題して行われました。

この本はとても面白い本です。「ソフトを他人に作らせる日本、 自分で作る米国」と聞くと、日本はダメだ、米国流に変えなければ、と考えてしまいますが、本に書かれている様に、どちらが良いとも結論付けられていません。ハウツー本があふれる中、事実を示して、読者に考えさせてくれます。

家族に「ご飯作るけど、何が食べたい」と聞くと、特定のメニューを指定しないで「ジャガイモとタマネギとにんじんがあるし、肉も色々あるから」と言われたら、あなたはカレーライスを作るでしょうか?

それ以外にも、シチューもありますし、ちょっと工夫してビーフ・ストロガノフにしも良いですし、寒い日ならポトフなども良いですね。事実を明らかにすることで、色々前向きに考える事ができます。(我が家なら「私が作る方が美味しいから置いといて」でしょうけどorz)

そういう本について語ったのですから、意見も色々、なかなか楽しい時間を過ごす事ができました。ここでは、以下の発表スライドにあまり書いていないところを含めてまとめておきたいと思います。

本とは違う視点で考えると、経済や政治の影響が大きいと思います。米国と日本を比べると、以下の様になります。

米国

国防・宇宙からソフトウェア開発が発展し、それと共にソフトウェア工学も発展しました。その後、NASAの予算や軍事費が減らされた後、インターネット技術が民間に解放され、起業ブームがおこりました。

産業界ではウォーターフォール開発がすすめられて標準化が進み、開発を発注するの基準としてCMMが普及し、 従来の開発がオフショアに流れ、技術者が新規ビジネスに活路を求めた事で、アジャイル開発をベーストしたスタートアップが増えたと思います。

日本

日本では1980年代から5年から10年遅れていると言われています。米国では産学の交流が盛んで様々な技術が並列に発展しましたが、日本ではそれほどの交流や広がりがなく、米国の技術を順に追いかけるような状況が続いています。

産業的に見ると、電電公社や金融機関のシステム等でソフトウェア産業が発展しました。しかし、インターネットの先駆けとなるべきシグマ計画では、メーカーのワークステーション規格を定めたものの普及せず、ネットワークも残らず、ルーターをばらまく企業が現れるまでインターネットブームは来ませんでした。さらに、失われた20年によって、流通やゲームなど新規ビジネスはあったものの起業ブームには至りませんでした。

戦略的視点

米国のやり方は横綱相撲で、リーンやスクラムの様に相手の強みを学んで技術体系を確立します。様々な人種のいる国なので、得意の標準化や体系化、アピール力でビジネスをします。

ヨーロッパはそれに 国際規格で対抗しました。CMMの際に日本は、それまでの組織文化を改めましたが、ヨーロッパは段階モデルだけを正解としないSPICEを国際規格ISO/IEC 15504(Wikipedia)にして、CMMIに影響を与えました。

かつて、トヨタはフォードに勝つために、フォードの後追いをしませんでした。それでは勝てないからです。大阪のTV局もはギャラの高い東京を追いかけてもうまくいかないので、お笑いやロケ等の安価な独自企画で勝負しています。

小さな国の日本はそのような戦略的な視点が必要です。幕末の頃、植民地化を進める列強に対抗するために、技術的に負けている事を認めて開国し、多少の内戦はあったものの力を合わせ、体制を刷新して近代国家を樹立しました。同じ事がソフトウェアでも可能だと思っています。

おわりに

関西に居ると様々なコミュニティのある東京がうらやましくもあります。しかし、それなりのコミュニティにいると一通りの情報が集約されて入ってきますし、地理的にも狭いので直接会って議論することも可能です。これは関西の強みです。

この本の中で米国の技術者が大変だと思ったのは、地理的な不便さです。最近は、インターネットがあればかなりの事ができますが、ディスカッションは直接会わないとできません。そこで、この本にある様に彼らはお金を出してカンファレンスに参加します。

ここに我々の強みがあると思います。カジュアルに語り合えるコミュニティで学び、語り合えば、未来を展望する事ができます。敵を知り、己を知れば、一枚上手(Go one better)をいけると思います。

今回、谷島さんの本と講演で、色々と考えさせていただきました。ありがとうございます。


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