[#agile] 「リーン開発の現場」を読んで その4 - 知識が繋がった -
本の感想には色々あると思いますが、「リーン開発の現場」は、これまでの知識が繋がったような感動を覚えました。
川口さんのAgile and Leanの資料にあるようにアジャイル開発の源流には2つあり、野中氏のオリジナルスクラムとトヨタ生産方式(TPS)です。それぞれソフトウェアの世界では、スクラムとリーンとして取り込まれました。
これらは共にアジャイル分類される事が多いのですが、かつてアジャイルはXPとほぼ同じ意味だった頃にリーンの本が出た時には、リーンがアジャイルと呼ばれる事に違和感を覚えていました(川口さんの図でも点線になっています)。
しかし、それがAgileを経てカンバンになると一つにまとまります。これはAgileの目指すものという意味では理解できるのですが、具体的な姿はイメージしにくいものです。
(アマゾンのレビューにも書きましたが、 やってみないと理解が難しいのは人を重視するアジャイル共通の難しさです。たとえば「リズム」と言われてもなかなか理解できないもので、私はチケット駆動開発をやってみて、ようやく日々のリズムを感じる事ができました。その様子は書籍「チケット駆動開発」のプロローグをお読みください。)
スクラムとリーンからカンバンで一つになる。それもやってみないと難しいものなのかもしれません。しかし「リーン開発の現場」の具体的な事例を読む事で、それが感じられました。
これまでに取り上げたキーワードだけでも、事例を通して知識が共通化されます(これ以外にも色々あります)。
カンバンボード
情報共有してみんなで考え、現場で改善します。コミュニケーションは古くからソフトウェア開発の課題でした。XPもスクラムもカンバンも貼りものによる情報共有で、コミュニケーションを改善します(貼りものではありませんがチケット駆動開発でも同じですね)。
WIP制限
開発者の能力を最大限に発揮させます。プロジェクトファシリテーションやチームソフトウェアプロセスでも言われている事です。WIP制限では仕掛り数(同時作業数)を制限する事で実現します。
キュー
パイプラインのバッファを適切にとります。トヨタ生産方式の影響を受けたと言われるTOC/CCPMと方法は違いますが、同じようにバッファをコントロールすることで全体最適します。
優先度
適切な時期を考えます。より積極的なリスクベースの考え方をとっていますが、「リーン開発の現場」では主に作業がなくなるリスクを意識している様です。どちらも優先度といえるでしょう。
この本を通して具体像が見えてくると、アジャイル開発がオリジナルスクラムとTPSだけでなく、多くのソフトウェア開発の技術と繋がっている事がわかります。
これまで別々の知識として理解していたことが、この本の具体的な事例を通じて一つに繋がりました。知識がより深まってさらに一歩、実践できるレベルに近づいたように思います。
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