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自転車の教え方 - トレーニングのあり方の考察 -

以前「[#TiDD] SECIモデルから朝会という「場」を考える - 平鍋さん@SEA関西 -」にも書きましたが、自転車の教え方は形式知が先にあるべきと思っています。

通常の方法

通常は暗黙知を経験を通じて教える方法がとられます。自転車の後ろを押さえて一緒に走ってあげて、慣れてきたらそっと手を離すという方法です。これは親子関係を良好にするかもしれませんが、あまり効率的とは言えないと思います。

このバリエーションとして、半日で乗れる様にする方法があるそうです。それは、ヘルメットや膝当て、肘当てなどのプロテクターをつけて、けがをしない様にすれば、怖がらなくて済むのですぐに乗れるという方法だそうです。

さて、自転車を乗る際に覚えることは何でしょうか?自転車の乗り方もちろんですが、上のような方法ではそれ以外にも覚えてしまわないでしょうか?

親の愛情と共に、親はけがをしない様に用意してくれる事、理屈がわからなくて怖い時はガードする事、とにかく経験する事が大切という事、でしょうか?

形式知を活かす方法

さて、もっと早く乗れる方法をお教えしましょう。それは、自転車を乗る際に必要な二つの事を教えるという方法です。

  • ペダルを漕げばこけない
  • ブレーキをにぎれば自転車は止まる

この二つを実践すれば、自転車はすぐに乗れます(直進だけですが、、)。自転車を立てて、初めだけ持って「思いっきりペダルを漕げ!」とさけびます。

仕事が忙しくてなかなか遊んでやれない時に考えた方法ですが、あっという間に乗れました(直進だけですが、、)。

この方法は、いくつかの特徴があります。

  • 自分でできる事
  • 押さえてもらったり、ガードをしないで、いきなり本物に乗っている
  • 原理を知ることで、世の中が変わる事

この方法の背景にある考え方を説明します。

Toy programとThesis ware、あるいは、in vivo

大学におけるソフトウェア工学実験を表現する言葉には、色々あります。

Toy program というのは、実社会のソフトウェアの規模に比べて非常に小規模である事を示しています。小規模なプログラムにおける問題は大規模なプログラムで発生する問題と異なると言う批判です。

Thesis ware というのは、学位を取るためのソフトウェアと言う事です。素晴らしいソフトウェアを開発したという論文を書いて入るものの、バグだらけで使い物にならない、一般利用に耐えない限定された条件でないと動作しない、そもそも公開されない、といった批判です。

批判ではなく、特性を表す言葉として、試験管の中のと言う意味の in vivo があります。これは、本来の場所を示す in situ と対比して述べられます。試験管内ではノイズ(外乱)が少ないので、特定のパラメータだけを変更してその違いを明確にしやすいと言う長所があります。その反面、複数の要素が絡み合う、現実的な実験結果とは異なる可能性があります。

医学の世界

このように得た理論を医学の世界ではどのように使うのでしょうか?以前、聞いたお話では、理論的な学習だけでは教えられない暗黙知にあたる部分の教育法が色々工夫されている様です。

医学の世界も、かつては徒弟制度のように先輩の大先生が背中を見せて後進を育てていた様ですが、それではなかなか育たない事や初めて本物の患者を相手にする時のリスクが高い事から、本物に近いロボットを使う、ロールプレイする、ビデオなどの教材を使うということが行われています。

テレビで心臓マッサージのロボットを見られた方も多いと思います。心臓マッサージでは人工呼吸とマッサージの組み合わせのタイミングや力の入れ具合など、特定の動作をトレーニングするロボットがあり、うまくやらないと回復が遅れたり、死んでしまうことがシミュレーションされます。

心臓マッサージの様に同じ状態を作り出す事が困難で、失敗すると命に関わるようなことであれば、理論的な知識を予め与えた上で本物に近い経験で補うことで、本番に向けたトレーニングが行われます。

緊急医療ではチーム活動が重要だそうです。海外ドラマのERなどの緊急医療を扱うドラマでもその一部が垣間見れますが、患者を運ぶ時や手術の際の立ち位置と役目は、あらかじめ決まっているそうです。

たしかに、患者に声をかける役や脈を測る役、服装を切り裂く役、などかなり手慣れた感じに見えます。これは、それぞれの役が決まっていて、どのような時に誰が何をするかが明確で、何度も練習しているからこそできるプロの技です。しかも技術は進歩しますから、外で実習を受けた人はそれを院内で同じ様に広めて技術レベルを維持しているそうです。

そして、様々なトレーニングは知識学習とセットになっています。教科書的な学習だけでなく、まるでERのようなビデオを見ながら、それぞれの担当者の問題点などを説明して知識を得ていきます。

体系的な知識の必要性

上に書いた内容は、OJTは人体実験 - 池上先生@SS2008 - に書いた講演を思い出しながら書きました。この記事はOJTでなくきちんとトレーニングしましょうという講演の主旨にそった感想を書いています。しかし、最近はその前にすべき事があるのではないかと思っています。

それは、知識の体系化です。医学の世界では、それまでにわかっている知識を体系づけて理論的に説明され、教育されている事が前提です。その上で、実践が必要な所に関してはOJTではなくOff-JT(Off the Job Training)でしましょうと言う主張なのです。

形式知として整理すべき所は整理して、暗黙知でないと得られない所はより現実的に近いトレーニングをすると言う事が必要だと思います。しかし、ソフトウェアの世界は技術の変化が激しく、現実的なトレーニング教材を作ってもすぐに陳腐化してしまいます。そこでOff-JTでは、どうしても基本的なトレーニングが中心になります。それが有効なのは初心者だけですので、OJTを減らすことを目指すなら形式知の教育が中心にならざるを得ないでしょう。

それを補うのは経験者の知識とフォローだと思います。私が勉強会という場アジャイルラジオに大きな価値を感じるのは、そのような背景からかも知れません。

まとめ

さて、みなさんは技術者はどのように勉強すべきだと思われますか?あるいは、自転車はどのように教えるべきと考えられるでしょうか?とにかく自転車に乗せて支えてやりますか?それともプロテクターを着けてけがをしない様にますか?

私なら、必要な理論に基づく知識を与えて、思い切ってペダルを漕いて、理論の実践に集中する様に教えます。もちろん、なるべく大きなけがをしない様に土のある公園で、外に飛び出さない様に見守ることは忘れません。

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