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巨人の肩に乗る - アカデミアとの壁・その2 -

前回の「言葉の定義」でも書きましたが、 私が最初に(人格)指導されたのは「謙虚になりなはれ」でした。

この指導、生意気な若者や、腕に自信を持つ現場の人間が良く注意される様です。なぜなら、わかったつもりになっているからです。

プロとして仕事をしているの以上、みんな一人前ですし、技術に自信を持って構いません。しかし、実際にはその技術の多くは既存技術から成り立っています。また、技術者が苦労して開発したものの多くは、既に誰かの発見した技術の再発明であることも多いでしょう。

研究成果を論文にする場合は、利用した技術や再発明した技術ではなくオリジナルの成果が必要です。そのためには、既存の技術はどのようなもので、どこまでを利用していて、何を実践して、 何を新しく発見したか、そして過去の発表とどのように違うかを明確にしなければいけません。

これは「巨人の肩に乗る」(はてな)と言われているもので、過去の偉大な成果を忘れずに謙虚に示す事で、自分の成果を際立たせる事ができるのだと思います。

「巨人の肩に乗る」には3つの方法に分けることができます。これは研究が、問題設定、手法、評価からなっているからです。

(1) 問題設定で過去の研究を否定する。これは過去の研究の少し乱暴な使い方です。XXXな観点からYYYが成果を上げているが、ZZZは考慮されていない。として、新たな問題設定をする。

(2) 問題設定はそのままで、手法を提案する。一般に「巨人の肩に乗る」というと、これをさす事が多い様です。新しい手法を提案し、なぜ優れているかと、どの程度優れているかを示します。

(3) 新たに評価します。これにはさらに3つの乗り方があります。

  • 新しい技術は評価が不十分なことが多いので、評価実験を追加してその技術の特性や限界を示します。
  • 評価方法を提案します。同じ手法でも新たな評価によって、結果が代わる事があります。この場合、評価の精度や特性がオリジナルな点になります。
  • 開発現場で実践した結果とノウハウを示します。現場の技術者が貢献しやすい方法です。事例の数を揃えるとインパクトのある報告になります。

このように分けると、現場の技術者ならではのアピール方法は(3)だけですが、実は(1)と(2)も日常的に行っています。しかし、どこまでが既存技術であるかを把握していないので、そのアピールができていないと思っています。

全てを自分の発見の様に言うのではなく、過去の技術をきちんと説明し、どこがすごいかを説明できれば、技術を積み上げ可能にできると思います。

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