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できる人を観察して勝負する

なに気なくつぶやいたところ、評判が良かったのでブログにまとめておきます。

このように考えだしたきっかけは、会社から奈良先端大に留学した時の事です。周りは旧帝大の卒業生ばかりで、一流とは言えない大学の出身者である私は困ってしまいました。

仕事として留学しているので、下手な成績はとれません。しかし、先生も学生も阪大、京大、九大など、偏差値の高い人達です。昔のような勉強法では勝負になりません。

そこでしたのは観察です。できる人達がどのように考え、どのような行動をとり、どのような特性があるかを分析しました。元々は修士(博士前期)過程の授業対策ではじめましたが、その後の研究の中で感じた事や高校生時代の話を織り交ぜながら説明します。

知識の構造を常にリファクタリングしている

上のつぶやきに書いた様に、新しい情報に接する際には、既にある知識構造に当てはめながら、場合によっては構造を見直しながら理解しているようです。

論文で言葉の定義が重要視されるのはこの事が大きく影響していると思います。短い文章で論理的な事を説明するので、用語を端的に説明して一つの意味でだけ使わないと、理解してもらえなくなるからです。

日本人ならある程度我慢してくれますが、国際会議などではタイトルの意味や背景の説明が不十分だと、すぐに質問されてしまいます(失敗すると面倒くさくなるので「後で説明する」と言って我慢してもらう事が多い様です)。

このような事を考えていて思い出したのは、旧帝大に行った高校時代の友人達です。化学や物理の授業後の休憩になると、必ずと言って良いほど言葉の定義を話し合っていました。

彼らは「XXと言うのはYYということだ!」「でもZZと言う例があるから必ずしもそうではない」などと話しておりました。

当時は本当に勉強が好きな人たちだと思っていましたが、お互いの理解を説明し合って知識の構造を見直していたのだと思います。知識が体系化すると覚えないといけない情報が少なくなるからでしょう。

成績の良い彼らは、勉強していない振りをして陰で猛勉強しているに違いない。と思っていましたが、実は効率よく勉強していただけなのかもしれません。

それなのに凡人の私は、情報を整理しないまま放置して、試験の前日に大量の情報を覚えようとしていたので、勝てる訳がありません。知識獲得の際に随時整理しておくと言う事が大切だったのですね。わからない事は貯めずにきちんと理解して整理する。それが一つ目の戦略でした。

ゴールに合わせる

先端大の授業に出ていると、優秀な学生さん達の話し声が聞こえる事もありました。「大学の推薦を得るには、成績の順位が良くないといけない。」「それは成績の平均点だ。」「優が取れない科目は捨てる。」などと話しているのです。

その後、先端大では単位数も評価に入った様ですが、当時は優、良、可をそれぞれ3点、2点、1点として、その平均で学生を順位付けして推薦を与えていました。そのような評価方法に合わせて、彼らは授業を受ける科目を選んでいたのです。

学校の推薦を得ることが目的ですので、単位が取り易いかどうかではなく、優が取れそうかどうか、場合によっては「優でなければ落としてください」と試験に書いて、少しでも有利にしようとしていました。

私が高校生の時は、試験に合わせて勉強するのはおかしい。と言って予備校式の勉強を否定していたのですが、優秀な彼らは受験勉強はもちろん、大学の単位もゴールに合わせていたのですね。

彼らが大学の先生になったとします。もし、論文の数だけで評価するなら、社会の役に立つかどうかは関係なくなって、論文数を得ようとしても仕方ありません。

大学の先生の評価には、すでに社会貢献なども入っている様ですが、さらに社会貢献の比率を高めれば、もっとすごい研究成果が生まれるかもしれませんね。

価値観が明確

上記2点の影響からか、価値観も明確な人が多い様に思います。興味のある授業を取るという点は普通ですが、それ以外の科目はより多く優を取ることが優先されているようでした。さらに、同じ優なら苦労せず、確実に取れる科目が好まれている様でした。

価値観が明確であるので、就職先を選ぶ際もシンプルでした。彼らは、生活に必要な収入を得る事が就職の目的なので、待遇が良く安定した会社が好まれている様でした。

個人的には、昇格するか、会社が伸びるかどうかで収入は変わると思います。そして何より、その会社に居ると自分が成長できるとか、会社を利用して社会貢献できるとか、会社に居場所ができるとか、そう言った事が豊かな人生につながると思います。

#最近の若い人には難しいかもしれませんね。

戦略その1:授業の取り方

これらの観察を経て、授業の取り方を検討しました。ポイントは

  • 良いところはマネをする
  • 正面から喧嘩をしない
  • 勝てるところで勝負する

です。

まず、知識の構造を常にリファクタリングすることとゴールに合わせるの2点は採用しました。その上で自分の価値観は程々に、勝てるところで勝負しました。

具体的には、リファクタリングにつながると思われる課題(宿題)はきちんとこなしました。しかし、できる人には記憶力では負けていますので、リファクタリングしても雑多な記憶が求められる科目はあきらめました。

逆に、単位を取る事すら体力的に難しい科目は、学生さんは捨てると思われましたので積極的に取りました。大学の先生も単位が取れない学生ばかりではまずいので、必死になって付いていくと、意外と良い成績がもらえるのでした。

このように、戦略的に授業を受けた結果、単位数は少なかったですが、ほとんどの科目が優という予想以上の成績をいただく事ができました。

論文の書き方

論文の執筆も同じような戦略を取りました。論文誌(ジャーナル)に採録されるには完成度が求められますので、いわゆる「落としにくい論文」とされる「抜けのないきちんとした論文」が正攻法です。

このような論文を書くには問題設定が重要です。明確な問題があり、研究の成果が解決する。その2つがきちんと対応してなくてはなりません。そこでゴールに合わせるように、やった事を裏返して問題設定にする。という方法を考え出しました。

しかし、恩師曰く「確かにそうだが、シンプル過ぎても面白くない」とのこと。たしかにできる人の論文を読むと、シンプルな問題設定を重要なものであることを説明できる様に関連研究を充実させ、解決策だけでなく想定外の成果(発見)を示すという努力がされている様でした。

研究生活の短い人間には、このように立派な問題設定と発見は簡単ではありません。そこで、論文を別の方法で面白くする事を考えました。つまり、「落としにくい論文」ではなく「落としたくない論文」を目指しました。

具体的には、やった人でないとわからない事を書くように心がけました。再現するために必要な情報はもちろんの事、ツールの実装時の工夫、得られた結果の現場の人間としての評価を加えました。

これが意外とうまくいき、シンポジウムや国際会議だけでなく、論文誌にも採録されました。中でも、博士論文にも入れたrubyによるプログラムの分析ツールの論文(26枚目以降)は、翻訳までしていただいて海外論文誌にも紹介されました。

まとめ

このように、現状を分析して勝てるところで勝負する方法は、大きな効果が得られます。これはエンピリカルソフトウェア工学やPDCAサイクルによる改善、さらにはアダプタブルウォーターフォール開発にもつながるものです。

いま、目の前のプロジェクトをなんとかするなら、問題を明確にしてそれを解決するプラクティスを導入すべきです。今週末のXP祭り関西2013では、そのような視点でプラクティスを説明する予定です。

お申し込みは2013年4月26日までです。ぜひご参加ください(最後は告知ですみません)。

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