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認定制度の功罪 - 成功のイメージが浮かぶまで考えていますか - #agileradio

いつも楽しく聞かせていただいているアジャイルラジオの第13回では、認定制度が話題になっていました。難しいテーマですが、少し考えてみたいと思います。

資格を考えてみる

これは、 採用面談での資格を考えるとわかり易いと思います。学生さんがある資格を持っていた時、どう評価するでしょうか?

たとえば、その資格がないとある作業が許されない場合なら、それを理由に採用する事もあるでしょう。でも、その資格がなくても作業が許されるなら、どう評価するでしょうか?

まず、やる気のある事は評価できます。簡単な資格であってもある程度の勉強が必要ですし、少なくとも試験あるいは講習の会場に行っているからです(社会人になってからですが、寝坊して情報処理試験を受けられなかった事があります:-)。

次に考えられるのは、少なくとも一定の知識を持っている事です。資格が得られる試験や講習を受けている事は、資格のない人よりは多くの知識があると考えられるでしょう。習得が困難な資格なら、なおさら評価に値するでしょう。

アジャイルラジオで言われていた教育の側面を考えると、このような底上げとしてのプラス面と、そこで満足して停まってしまうマイナス面があると思います。

ポイントはその資格が活かせるかどうかです。その資格を得る際に学んだ事を仕事の中でどのように活かし、さらに成長できるかどうかでしょう。

認定制度の落とし穴

認定制度の難しさは、難易度が低過ぎては底上げになしませんし、逆に難易度が高過ぎるとあきらめてしまう事です。CMMブームのときもレベル3で止まってしまう組織が多かったそうです。

これは努力すれば定義されたプロセスのレベル3は達成できるものの、定量化されたプロセスであるレベル4を達成するには、収集されたメトリクスを活用する仕組みがなければ長期にわたるプロセス改善のモチベーションが維持できないからだと思います。

CMMのレベルを達成する事は本来の目的ではありません。プロセスの問題を解消する目的でCMMのプラクティを導入していたはずが、いつの間にか手段であるレベル達成が目的になり、開発現場は仕方なしに実施する。そんな事が続いている間にやる気をなくし、プロセスを最適化するレベル5ではなく、定義されたプロセスをどのようにこなしていくかを考えてしまうのでしょう。

より高い目標がなくなると、プロセスは形骸化します。もっと頑張れるのに努力しない、「やったらできる子なのに」そんな聞き覚えのある状況に陥ってしまうのです。

イメージできますか?

CMMで有名だったオムロンの故坂本さんによれば、社内のプロセス標準を充実させなかったそうです。部下には「考えて開発しろ」と言われていたそうです。考えて開発する事がより良い開発につながるからでしょう。

ソフトウェア開発は、世の中に存在しない新しいシステムを生み出す作業です。全く同じソフトウェアを開発する事はありません。新しい条件で、新しいソフトウェアを生み出す際に、全く同じことだけで良い訳がありません。

新しい開発対象や動作環境を考慮して、チームで協力して開発しなければなりません。手順を守るだけでなく、プロジェクトがどのような状態になるかを考えて、具体的な成功のイメージを浮かべておかなければうなくいかないでしょう。常に成長が求められているのです。

まとめ

新しいものを生み出す作業の中で、認定制度は必要な知識を提供する事しかできません。得た知識を体にしみ込ませ、利用し、より良く洗練する事は、認定を受けた側の責任です。

プロセス改善には形骸化の罠が少なくとも2つあります。導入時の形骸化と経年劣化で生じる形骸化です。認定制度は一定の水準を目標とすることで、底上げを実現する反面、これらの形骸化を促進する触媒にもなってしまいます。

やらされ感から現場の問題を見失い、手段が目的になり認定だけを目指してしまうパターン。そして、実施している間に認定で学んだ事がおろそかになり、顧客や組織でなく、自分の事を中心に考えるパターンです。

このような形骸化に陥らず、日々の活動の中で、認定を通じて得ようとしたものがなぜ必要だったか、目的を見失わず、目指している事を実現しないといけません。

開発作業をいつものようにこなしてしまう前に、具体的な成功のイメージが浮かぶまでじっくりと考えて、さらに考えて、実践を通じて成長することがとても重要な事だと思います。

一人でモチベーションを維持するのは大変かもしれません。でも、あなたは一人で苦しむ必要はありません。プロジェクトの仲間は共に考えてくれる協力者ですし、この業界には同じ様に苦しんでいる仲間がきっと助けてくれるでしょう。

おまけ

書籍「チケット駆動開発」は、こうすれば良いという書き方をあまりしていません。どちらかと言うと、テーラリングガイドをはじめとして、こんな事や、あんな事がある、という選択肢を示すと共に、選択する際の大切な考え方を示しています。これは、じっくりと考えた上で、実践して欲しいからです。


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