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アメーバ経営はGQMアプローチだった - より良いメトリクスを考える -

アメーバ経営の本を2冊読み終わり(感想1感想2感想3)、ゆっくり考え直して気づいたのは、著者の稲盛和夫さんのアプローチがGQMに沿っていたことです。

ゴールに直結するメトリクス

GQMに関してはメトリクスの特性の記事でも、分析の起点として使わせていただいた有名な方法です。GQMはメトリクスを決める際に、ゴールから出発して、ゴールを定義する質問を考え、それを元にメトリクスを決める方法です。

「計測できない物は制御できない」という言葉がありますが、数値でなくとも何らかの見える化がされないと、コントロールはできません。しかし、計測できれば制御できるかと言うと、必ずしもそうではありません。

ソフトウェア工学の研究で良く行われる方法の一つは、品質や生産性などのゴールがあり、それと関連があると思われるメトリクスの有効性を統計的に示すと言うアプローチです。

この方法はそのメトリクスの有効性は示せます。しかし、そのメトリクスに合わせてコントロールすることが、ゴールに近づくかどうかはよく考えないといけません。

たとえば、お菓子を提供するとやる気が増して信頼性が向上するという仮説を立てます。業務やメンバーの特性を調整した複数のプロジェクトを用意して、お菓子を提供したグループの信頼性が高い事を統計的に示します。

仮にお菓子の提供によって信頼性が上がった場合、必ずしも本質でないかもしれません。実はお菓子を提供する事で、開発者が同時に休憩する事が増えてコミュニケーションが良くなったのかもしれません。だとすると単にお菓子の提供の有無ではなく、その提供方法や同時に休憩できる場所の有無が重要なのかもしれません。

このように考えると、ゴールに直結するメトリクスが「より良いメトリクス」だと思います。それを導きだす手法を形式化した物が、GQMなのです。

アメーバ経営のアプローチ

稲盛さんは技術者出身で、京セラを創業された時は「会計については何も知らなかった」そうです。そんな稲盛さんは本質を知るために当時の経理部長と多くのやり取りをされた様です。

そして、多くの激論を通して得られたのは会計の常識ではなく、より本質である「売り上げを最大に、経費を最小に」という原則と付加価値のメトリクスである「時間当り採算」にたどり着かれた様です。稲盛会計には多くの原則がありますが、特にこのルールは(意識されていない物の)GQMのアプローチで生まれたメトリクス定義だと思います。

ソフトウェア開発において、その実施が難しければ代替プラクティスを採用するように、直接収集が困難な場合はついつい代替メトリクスを用いている場合があります。しかし、これは次善の策であって、もしかするとお菓子の例の様にゴールから遠ざかっている可能性があります。

また、それがゴールに直結しないと思っていても、ついついメトリクスを良くする事が目標になってしまいがちです。その組織に取って何がゴールであるかをきちんと見極めて、その実現を可能にするメトリクスを定義する必要があると思います。

アメーバ経営は会計の常識に従った代替メトリクスではなく、より本質的なゴールに直結するメトリクスを採用しました。そのメトリクスによって、 ビジネスに直結する市場の状況が、各組織に伝搬し、見える化され、臨機応変な対応や、継続的な改善を実現したのです。

まとめ

かつては本業に付帯して受動的な「情報処理も必要」と考えられてきました。しかし、いまや本業をより良くコントロールするために、生き残りをかけて「情報処理が必要」になってきました。

管理を目的としたメトリクスではなく、組織の目的に合った良いメトリクスを定義して、活用する事が求められていると思います。

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