「生きた数字」からメトリクスを考える - 稲盛和夫著「アメーバ経営」その1 -
すぐれた経営者になるには、問題の本質を見極める能力が必要だと思いました。 稲森和夫著「アメーバ経営」で、見極めた本質だと最初に思ったのは「生きた数字」と言う言葉でした。
生きた数字
前回書いた稲盛会計学では、原価管理で用いられる標準原価を使いません。それは標準原価が、過去の原価から求められるので、コストダウン要求によって日々変化する製品には使えないからです。過去の原価を元に目標とする原価を決めると、これから売ろうとする価格では利益が出ないかもしれないからです。
そこで「売り上げを最大に経費を最小に」が目標になり、「時間当り採算」によって付加価値を計算します。棚卸しの際も売価から原価率を元に原価を決める「売価還元原価法」を用いる様です。
このほかにも法律に定められた減価償却期間でなく、より現実的な期間で減価償却を行います。これも「生きた数字」の一例だと思います。本の中では「生きた数字」は「現在の数字」という表現がされていますが、見方を変えると「使える数字」「使われる数字」だと思います。
生きたメトリクス
「生きた数字」を参考にメトリクスを考えると色々なイメージが浮かびます。まず、問題があるメトリクスを考えると以下のような物があります。
- 標準だからと集められる
- 集計結果が公開されない
- 開発中のプロジェクトが改善されない
- 複数のテストから残存不具合をもとめるなど本来の理論と合わない
- 上限値と下限値が定められているが、改善による見直しがない
- 改ざん、あるいは、作業方法が調整されている
逆に使えるメトリクスには、以下のような物があるでしょう。
- 開発中のプロジェクトを改善する(複雑度、カバレージ)
- 収集作業がコミュニケーションになる(プランニングポーカー、見積り手法CoBRA)
- 理論に沿った収集・分析が行われる
- 継続した改善が可能 (ベロシティ)
- 現場の活動に必要、あるいは、必要なツールから自動に集められる(EPM、EPM-X)
まとめ
上の様に思い浮かぶ項目を挙げていくと、どんなに良いメトリクスでも正しいプロセスが伴わないと「生きたメトリクス」にならない事がわかります。「アメーバ経営」で用いられる数字も、実際の現場で正しく利用されないとうまくいかないと思います。
この本に書かれている「生きた数字」を活かすプロセスとはどのような物であるかに注目しながら、読み進めたいと思います。
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