技術発表のポイント
技術発表には色々あります。ここでは、その種類と評価基準を説明して、そこから大切なポイントを説明し、最後にエンピリカルソフトウェア高額についてもふれます。
技術発表の種類
私的なものとしては、Twitterのようなつぶやきをはじめとして、ブログ、メールマガジン、雑誌、書籍などがあります。これらは、基本的に個人が勝手に書いている物です。
オープンなものでは、勉強会、分科会、研究会、ワークショップ、シンポジウム、国際会議、論文誌(ジャーナル)などがあります。形式的な確認だけで審査なしに発表できる物もありますが、概要やスライド、論文などを査読して合否を決める場合があります。
発表の種類としては、研究論文、事例報告、経験論文などがあります。
評価基準
これらを査読する場合は評価基準が決められていて、
研究論文: 新規性、有用性、信ぴょう性
事例報告・経験論文: 有用性、信ぴょう性、一般性
などが多い様です。このほか、読者や参加者との適合度が評価される場合があります。実際に発表する場合にもこれらを説明する事が必要です。
研究の場合は、新しく、役に立ち、それが定量的なデータなどで正しい事がしめされている事が求められます。
事例報告や経験論文では必ずしも新しくなくても良いのですが、役に立つことが示され、それが信頼でき、広く活用できる事が求められます。研究論文のような斬新さは求められませんが、まったく同じ発表を評価するわけには行きませんので、過去に発表された技術・研究とのちがいを説明する事は必要です。
また、解決する問題とはどのようなものか説明する必要があります(問題設定)。また、同じ事ができる様に実施方法の説明が必要ですし、結果の評価方法や評価結果の説明が必要です。また、課題や今後の応用の可能性の説明も期待されています。
大切なポイント
あなたが技術者なら「論文を書くわけではないのに」と思われるかもしれません。しかし、どのような発表であれ技術発表なら、それがどのような技術で他の技術とそのような関係であるかの説明は必要です。また、今までなぜうまくいかなかったか、なぜうまくいったかの説明は必要でしょう。
特に事例発表や経験論文の場合は、その事例特有の前提を示すと、どのような時にその技術が有効か、どの程度汎用的な技術であるかを示す事になり、発表の価値を高める事になります。
このように、その発表を聞く人が、理解し、活用できる様に、その技術に対する「なんでか?」を示す事が大切です。それが、その技術を活かす事になるのです。
もちろん、技術発表であっても技術的な面白さのほか、発表のわかりやすさや面白さなど、聞く人のためにすべき大切な事はあります。しかし、それは技術を技術として説明した上で、より良くするための物です。そこで、それらは最優秀発表賞などのような形で総合的に評価されることが多いようです。
エンピリカルソフトウェア工学
かつて、ソフトウェア工学がブームのとき、様々な方法論が発表されました。しかし、多くはどのような効果があるのかが示されず、いわば「言いっぱなし」のモノがたくさんあったそうです。そこで、定量的な議論が必要であると言われるようになり、やがて実証する事が求められ、「エンピリカルソフトウェア工学」が生まれました。
定量的に示す事は難しいですし、それを統計的に示す事はさらに困難です。しかし、結果をうまく整理してモデル化できれば、現場の事例を数値で示す事も可能になります。ご参考までに、ソフトウェア工学の国際会議では最も難しいと言われているICSEで発表した研究の日本語版のスライドを公開しておきます。
プラクティスの経験を蓄積すれば、もっと導入が楽になるよね。事例を公開しようよ。という事でしたが、その思いをきっかけに、@agilekawabataさんの協力を得て、論文にまとめました。データが少ないのでそれほど信頼性は高くない情報ですが、これからプラクティスを導入する方には有効な情報をまとめられたと思います。
ちなみにICSEは一般に10-20倍の難関ですが、これはfar east tracという6倍倍程度の倍率のセッションでした(一般のシンポジウムは2−3倍ですので、ラッキーだったのは間違いないようです)。
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