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さかば流・論文作法 その2 - 論文を書く上での注意点 -

さかば流・論文作法 その1 - 論文の構成 -」の続きです。

論文を書く際のポイントは、いかに誤解なく内容を理解してもらうか、いかに興味を持ってもらうか、を考えないと行けません。その実現のためには、論文の構造が大切です。

論文は、関連情報を提供するものでも、書きたい事を書くものでもありません。提案する技術の内容を新規性、有効性、信憑性の視点で示す物です。余分な事を書かない様にして、主張する事を中心に肉付けして膨らませるものです。

それは全体に無駄のないクリーンルームで書かれたような文章です。定義された用語によって既存の問題が示され、それを提案する技術がどのように解決して、どのような効果があり、課題と可能性が示されます。しかし、そのような文章を書くにはテクニックが必要です。

テクニック

前の記事で引用したつぶやきにほとんど詰め込まれています。少しずつ説明します。

1) まずは論文で主張したい点を3つにまとめて

もちろん1でも5でも良いのですが、説明する上でわかり易いのは3つの項目です。この3という数字は複数の大学の先生から聞いたことがあるので、一般的な数値だと思います。2段組みの論文だと、バランスよく1ページに書けるのはだいたい5−6段落です。このうち、導入とまとめに各1段落、必要なら後続の章へのつなぎの段落を書きますので、各項目に段落を割り当てるなら3というのは合理的な数字でしょう。

2) それを裏返して問題設定すると論文の概要ができます。

前の記事に書いた様にソフトウェア工学の論文では、問題設定が重要です。議論の土俵固めなくしては議論できないからです。1で挙げた3つの項目に対して、現状の問題点を考えます。もし、他にもその問題を解決する方法があれば、その項目をあきらめるか、従来の方法との違いを明確にして、項目を見直すとともに問題設定を再考します。

3) それを端的に表現すればタイトル。

3つのことによって実現することはいったい何か、世の中にどのように役立つかを考えます。前の記事に書いた「提案手法名:xxを目的としたyyの提案」というのはベストとは限りませんが、方向性を見失わない様にひとまず決めておくには良いでしょう。

4) 用語を説明すれば背景になります。

タイトルに出ている用語や、新規性、有効性、信憑性を示すための議論に必要な用語を説明します。この後に述べる構造を意識して配置すれば、「はじめに」に書くべき背景になります。

5) 各段落を一行で表した箇条書きを作ってから書き出すと綺麗な構造になりますよ。

次に述べる構造の作り方です。段落ごとに独立した文章にして、段落の並びで論理的な説明をするので、各段落を代表するような文章を段落の数の箇条書きを作成してから、全体を書き出します。きれいな論理展開なら、接続詞がなくても意味が読み取れるようになります(もちろん、読み易さを考慮して入れます)。

文章の構造

論文はいわば報告書ですので、全体の見通しを良くして理解し易くします。

まずは、トップダウンに書くことを意識してください。全体から詳細に、広い内容から狭い内容に、抽象的な議論から具体的な議論に進めます。

予想外の結末は基本的に必要ありません(経験してわかったちょっと良い事は、結果や考察に少しだけ入れると良いでしょう)。「概要」と同じ様に、基本的に結果から書きます。概要、章の最初の段落、各段落の最初、などで結果や構成を示して、見通しを良くします。

論文の面白さは、円蔵さんの落語や、刑事コロンボのストーリー展開に似ています。はじめにオチや犯人を見せておいて、どのように攻めていくかを楽しみます。

多くの大学では輪講と言って、論文や本を分担して読みます。これは最新の技術を容易に入手する方法であるとともに、論文の構造について議論して、面白い論文を知ってテクニックを盗む場でもあります。

書く順序

色々な方法があると思いますが、さかば流の方法を説明します。

始め方には文献始動と実験始動があります。とはいっても、闇雲に初めても何が新しいかわからずにうまくいかないので、最低限の文献調査は必要ですので、文献を調べてから実験するという感じですね。

文献があって、実験あるいは事例がそろって、それなりに新規性、有効性、信憑性があると思われたら、論文を書き出します。

全体のページ数と各章のページ数を決めます。全体が8ページなら、タイトルと概要で0.5ページ、はじめにが1-1.5ページ、関連研究が1ページ、提案手法2ページ、評価方法0.5-1ページ、結果と考察1ページ、おわりに0.5-1ページと言った感じです。参考文献の一覧や、図表、などもページ数に入りますし、最終的には著者紹介もページ数に入ります。

まずは、仮のタイトルと仮の概要を考えて、イメージを膨らませます。次にはじめにの段落構成を引用とともに考えます。引用がほとんどないのは信憑性や新規性が示せませんし、具体的な文章や内容の引用でなく関連してるだけの引用も書きたい事を書いているだけで、あり得ません。

以前、シンポジウムの査読をした際に面白い論文があり、その問題設定として知らない文献が引用されていました。その文献はその論文の大切なポイントとなる物でしたので、大阪府立図書館まで出向いてコピーしてきました。ところが、それは引用内容と全く違う物で、一気にその論文の信憑性はなくなってしまい、不採録にしました。論文を書くからには通ってほしいですが、内容が使い物になる「良い技術」でなければ意味がありません。

閑話休題。

関連研究移行は最初から真剣に書きます。書き進めながら、全体の一貫性を考えて修正しながら書き進めます。書き進めているうちに「はじめに」は大きく変貌しているかもしれません。

当然、概要やタイトルも一貫性のない違和感のあるモノになっている事が多いです。しかし、その都度修正していると時間がかかりすぎますので、ほぼ完成状態になってから見直す様にしています。

ある程度書き進めた後は、査読者がタイトル、概要、おわりに、はじめに、関連研究、その他と読み進める事を意識して見直します。査読社はこの順に読んで、気になるところがあればそれだけを探して読まれます。論理的な矛盾や説明不足がない様に気をつけます。

全体で気をつける事

技術文書ですので用語は統一されていなければいけません。一つの事は一つの言葉で表現します。翻訳の際に役立ちますので、メモや用語集を作りながら進めても良いかもしれません。

何事もゴールに向けて作業をする事が、効果的にゴールを達成するシンプルな方法です。論文も評価基準に合わせて、内容を書きましょう。

論文が実証を伴う物であるなら、その経験は貴重な情報です。論文の価値を高めるために、経験者でないとわからない事を書きましょう。

おわりに

より読み易く、うならせるような、さらに上級の論文もありますが、私が理由を説明できるのはこのレベルです。このレベルの書き方でも、技術を整理し、他の人に伝達して、評価してもらうための最低限は満たしていると思います。

ぜひ、身の回りの技術を整理して、提案する内容で勝負してください。

次回は「良い技術」について書く予定です。

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