改善の壁 - SS2007に参加して -
ソフトウェアシンポジウム2007に参加しました。今回はよりワークショップを重視した構成になり、多くの情報交換ができました(反面、参加したワークショップと関係のない情報を得る機会がなく、その点はちょっと残念でした)。私が参加したのは品質保証(SQA)でしたが、EPMのことを発表(リンク先はPDF)することができました。
内容は「障害管理ツールのデータをEPMで分析したところ、プロセス改善のきっかけを見つけることができた」というものでした。しかし、ワークショップの議論が「SQAを進めるために必要なメトリクスとツール」だったので、それに合わせて議論したところ
- SQAが手の回らない小さなプロジェクトでも開発者自身が分析できる
- メトリクスを収集するために作業が不要
- 開発中の情報をいつでも収集できる
といった点が好評でした。
さて、タイトルの改善の壁というのは、シンポジウムの最後の各ワークショップの報告に出てきた「準最適」という問題です。今のままではいずれ問題になるから新しいことを始めようとすると「今のままで良いじゃないか」という意見が出て、先に進めないというものです。レガシーなソフトを作り直したり、新しい技術を導入するには、コストがかかり、リスクもあることから、会社を問わず苦労するところですね。
これまでのプロセス改善(SPI)の議論では、
- 経営者層のコミットメントを得る
- 部分から全体に進める
- プロセスチャンピオンが引っ張る
という方法が言われてきました。ここでは、これ以外を二つほど考えてみます。
一つ目はプロダクトラインに学び「きっかけを生かせ」ということです。プロダクトラインでは、シリーズ開発などでソフトウェア資産の再利用を重視して、経営資本を投入します。その成功例を聞いているとあることに気付きます。これまでバラバラに開発したものをプロダクトライン化する際には、たいてい何かきっかけがあるのです。
新シリーズの開発などは非常に良いきっかけです。今までとあまり変わらない開発対象なら、今まで通りに開発することがたぶん効率的で、リスクの高い方法をとることもないでしょう。しかし、新シリーズなら従来の方法にもリスクがあり、新しく作り直したり新しい技術を導入することとのコスト差も小さく見積もることができます。
二つ目は「多次元に考える」です。「準最適」という聞きなれない言葉を使われていましたが、数学的に言うと「局所解」ですね。つまり、線形に考えると最適解が見つからないということだと思います。ついつい目先の収支にとらわれて新しいことができないなら、別の次元のパラメータを考慮することです。
このパラメータには、将来の市場予測や、開発環境の変化の予測など、プロダクトラインで検討されるべきパラメータが参考になるでしょう。
今回は日本酒 麒麟山「吟辛」(これがおいしい!)も、毎日のように飲めました。また、日本海タワー(リンク先はgoo)からも佐渡島らしき山影も見ることができました。そんなこんなで、結構楽しいシンポジウムでした。
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