ソフトウェア開発に必要なイメージ力
スペンサー・ジョンソン著「チーズはどこへ消えた」(扶桑社) を読みました。この本は6年前にブームになった本ですが、古本屋でたまたま見つけました(105円!)。出版社の案内にはこう書かれています。
迷路のなかに住む、2匹のネズミと2人の小人。彼らは迷路をさまよった末、チーズを発見する。チーズは、ただの食べ物ではなく、人生において私たちが追い求めるもののシンボルである。
ところがある日、そのチーズが消えた!ネズミたちは、本能のままにすぐさま新しいチーズを探しに飛び出していく。ところが小人たちは、チーズが戻って来るかも知れないと無駄な期待をかけ、現状分析にうつつを抜かすばかり。しかし、やがて一人が新しいチーズを探しに旅立つ決心を・・・。
一度の成功体験にしがみついて状況の変化に対応できない小人と、成功をイメージすることで過去を捨て新しいことに挑戦する恐怖に打ち勝つ小人の寓話とそれを聞いた人たちの議論が書かれています。
この本の発売当時は、企業に活力をもたらすためか、企業内教育にもてはやされたようです。しかし、このお話は何となく、ソフトウェア開発にも当てはまると思います。
以前書いた「能力の向上を意識する」こととも関係するのですが、仕事をどのように進めるかということです。ある意味、戦略とか、理解した上で、魂の入った、というような言葉で表わされることだと思います。
ある開発をする際には、何らかの方法論を用いて作業が進められます。しかし、うまくいかないパターンの一つに、方法論を理解せずに形だけ実施するというのがあります。しっかりと文献を読めば、なぜそのようにするのか「思い」のようなものが書かれているのでしょうけど、ルールのようにとらえて、現実を見なければうまくいきませんよね。
プロセス改善もそうですよね。「レベルXXを取得するんだ(あえて間違った表現をしています)」なんて言う言葉で、プロセスを変更したなら、営業向けには改善しても、開発作業のモチベーションがさがって、開発者や管理者はなんとかすり抜けることばかり考えてしまうでしょうね。
何かをする上で、その意味や戦略をしっかり考えてイメージすること、それが重要だと思うんですよね。でも、これは能力を向上させることにパワーを割く必要があるので、「誰でもある程度のものができるようにする」という工場化的な発想だけではうまくいかないと思います。だから、コンサルティングというビジネスが成立するのかもしれませんね。難しいところです。
もし、イメージを持っていないことが問題と認識されているなら、すぐにできることがひとつあります。「ワークショップ」です。個人が作ってからレビューするのではなく、みんなで考える場を持つことです。みんなで共通認識を持てたなら、きっと良いイメージなのでしょう。アーキテクチャの設計も、プロセス改善も、ワークショップが注目されています。
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