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能力の向上を意識する - 日本人の弱点 -

IEEE Softwareの編集委員をされるなどソフトウェア工学の世界では有名な松原友夫さんがITproに書かれた記事「日本のソフトウエア産業、衰退の真因」が話題になっています。少し前にスラッシュドットのストーリにもなりました。

記事の内容は、以前から松原さんが講演されていた日本のソフトウェア産業を憂うという内容です。松原さんが開発の現場におられたときは、アメリカから見学に来るぐらい日本のソフトウェア開発は優秀だったそうです。しかし、大量採用、Σプロジェクト、技術伝承の断絶、派遣、によって日本のソフトウェア産業は情けない状況になってしまいました。企業よ自立せよ!、エンジニアよ自立せよ!と言うお話です。

以前から欧米との違いが気になっていました。どうも日本人はお金とか地位とか評価尺度が一面的で多様性がないような気がします。

立身出世、錦を飾る、出る杭は打たれる、和をもって尊しとなす

なんとなく儒教的で、個人の能力の向上よりも地位の向上に目が行きがちな気がします。会社の運営しかり、プロジェクト管理しかり、転職しかり、ではないでしょうか?

会社の件は松原さんの書かれたとおりで、会社の技術力を向上させるためにリスクを取って請負をしているところもありますが、時間精算の派遣という堅い商売をしようとする会社が多いようです。

組織にCMMを導入しても、プロセス能力の向上というよりは、品質をなんとか死守するとか、ルールを守るような、とにかく今のプロジェクトを何とかするとか、世間的に高い評価をもらう、というイメージがあります。

また、転職する際もそうです。もちろん、スキルアップが目的で転職する方もおられますが、良い給料をもらうとか、人間関係がうまくいかないとか、これを逃すと転職できないとか、能力に対してポジティブな感じがあまりしません。

なぜ、欧米はあんなにポジティブなのか、個人の能力や組織の能力の向上に貪欲なのか、以前から疑問でした。最近、ヒントを見つけました。キリスト教の「タラントンのたとえ」というお話です。

ある人(神様)が僕(しもべ)にお金を預けます。人によって渡される金額は違うのですが、僕たちは頑張ってそれを増やしてほめられます。しかし、1タラントンだけ預けられた僕は、無くしては大変だと増やそうとせず、(天国から)追い出されてしまいます。

才能とか技量と訳される「タレント」という言葉は、このタラントンというお金の単位が語源だそうです。このようなお話を、小さな時から聞いて育ったなら、技量を高めることが当たり前になるでしょう。

欧米もお金中心な面はあると思うのですが、多様性に富んだ感じや、技量の向上を意識している感じがするのは、こういったところにあるのではないでしょうか?

これはキリスト教だけではありません。「神は死んだ」と言ったニーチェも、「力への意思]という言葉で、人間がよりパワーアップしたいという根本原理を述べています。欧米人の思考には、能力の向上が強く根付いていると思います。

ここで、日本人の取るべき道は二つあると思います。ひとつは従来のコツコツと開発する能力を活かすこと。組み込みのように抜けの許されないソフトウェアを、しっかり造ることは日本に向いているような気がします。ライバルの能力向上によって革命的な変革がおきなければ成功するでしょう。

もうひとつは、ゴールに向かいつつ技量を高め、伸ばす事を意識することです。古いデマルコの見積もりの本に、ひとつの目標は達成できるが、それ以外は難しいと書かれていました。ソフトウェア開発では、ものづくりとか、品質とか、どれかひとつに目がいきがちですが、個人の能力や組織の能力向上を意識した運営を行うことです。合理性だけでなく技量を高めること、たとえば安易な力作業よりもツール化を意識するなど、積極的な運営が必要だと思います。

こういった話は絶対的な正解がありません。開発者の能力や文化を見極めながら、より良いバランスで運営すべきでしょう。そのためには、日本人の弱点を理解しておく必要があると思います。

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