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2006/03/23

遠藤周作「深い河」

この本は遠藤周作の宗教観が詰まっています。この小説では、様々な人物がそれぞれの思いを抱いて、ガンジス河のほとりに向かいます。それぞれの人物の経緯とインドでの経験の中で、カトリックのクリスチャンである遠藤周作の宗教観が述べられています。

別の本で、厳しい自然からユダヤ教がうまれ、ナザレの恵まれた自然からキリスト教が生まれたと述べていた遠藤周作は、この本ではガンジス河を題材に宗教観を展開します。友人の井上洋治神父の留学生活や日本におけるキリスト教の考え方をも踏まえたその内容は、純文学でありながら従来の遠藤周作のキリスト教の書籍を超えた宗教性を持っています。

従来から遠藤周作の言っているキリストの復活の解釈を、この本のテーマのひとつである転生として語っています。

神やキリストという言葉を聞きたがらない友人に、神父でありながらヒンズー教の人々を助けている登場人物は、キリストを玉ねぎと称して

「玉ねぎが殺された時」
(中略)
「玉ねぎの愛とその意味とが、生き延びた弟子たちにやっとわかったんです。弟子たちは一人残らず玉ねぎを見棄てて生き延びたのですから。裏切られても玉ねぎは愛し続けました。だから彼ら一人一人のうしろめたい心に玉ねぎの存在が刻みこまれ、忘れられぬ存在になっていったのです。弟子たちは玉ねぎの生涯の話をするために遠い国に出かけました」
(中略)
「以来、玉ねぎは彼等の心のなかに生きつづけました。玉ねぎは死にました。でも弟子たちのなかに転生したのです」

さらに、神がすべてのものを包み込む存在であることを以下のように述べています。

「神とはあなたたちのように人間の外にあって、仰ぎ見るものではないと思います。それは人間の中にあって、しかも人間を包み、樹を包み、草花をも包む、あの大きな力です」

「神は色々な顔を持っておられる。ヨーロッパの教会やチャペルだけでなく、ユダヤ教徒にも仏教の信徒の中にもヒンズー教徒の信者にも神はおられると思います」

そしてガンジス河からも神の愛を語ります。

「ガンジス河を見るたび、ぼくは玉ねぎを考えます。ガンジス河は指の腐った手を差し出す物乞いの女も殺されたガンジー首相も同じように拒まず一人一人の灰をのみこんで流れていきます。玉ねぎという愛の河はどんな醜い人間もどんなよごれた人間もすべて拒まず受け入れて流れます」

そして、ガンジー語録集からすべての宗教に関して以下の引用をしています。

「私はヒンズー教徒として本能的にすべての宗教が多かれ少なかれ真実であると思う。すべての宗教は同じ神から発している。しかしどの宗教も不完全である。なぜならそれらは不完全な人間によって我々に伝えられてきたからだ」

この引用には、強い信仰を持つ遠藤周作が、人の心を描く作家として他の宗教をどう考えているかが表れています。

上に引用したように神父に玉ねぎと言わせた、愛を感じることのできない登場人物がガンジス河に沐浴する際には、人が宗教を信じる背景を語らせます。

「しんじられるのは、それぞれの人が、それぞれの辛さを背負って、深い河で祈っているこの光景です」
(中略)
「その人たちを包んで、河が流れていることです。人間の河。人間の深い河の苦しみ。そのなかにわたくしもまじっています」

どろどろの苦しみや悲しみをすべて受け止めてくれる神と、それに身をゆだねる人間の関係を、暗くよどみ、死者の灰も流れているガンジス河に入る人間の心から描いていると思います。

最後にマザー・テレサの「死を待つ人の家」を作った修道女たちが、行き倒れの人を介抱する姿に対する質問で、人にとって信仰とは何かを示します。

「何のために、そんなことを、なさっているのですか」
「それしか・・・・・この世界で信じられるものがありませんもの。わたしたちは」

純文学として描きながらも、遠藤周作の宗教観がふんだんに盛り込まれた「深い河」は、キリスト教信者だけでなく、あらゆる読者に神の存在を感じさせるような作品だと思います。そして、その背景には、遠藤周作の神への強い信仰と深い愛を感じました。

(ある程度遠藤周作や井上神父の作品を知っていると、より深く楽しめると思います)

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コメント

さかばさん、初めまして。
リンクを辿っていたら、たまたまぶつかりました。
井上師の「風の家」出身。
今でも基本的には「風の家」で御ミサに授かります。

この度ご受洗だとか。おめでとうございます!
いよいよですねー!こちらも嬉しくなります。(^^)

T教会でらっしゃいますか?
昨年2月頃、茨木市のキリシタン遺跡を廻り、
そちらの御ミサに授かりました。

素敵なお御堂ですね。
待ち合わせがあったりしてミサ後早々に、
退出しなければならなかったのに今でも悔やんでいます。

大阪周辺は主人の実家なので、
また機会があったら訪問したいと思っています。

ところで、遠藤さんの追悼ミサにはいらっしゃいますか?
私は急遽、長崎で行きたい場所があり、参加する予定です。

(ブログを置いていきますが、
文章力がなくマメでないので全然つまらなく、
かえってイライラするかもしれないので、
あまりお勧めできませんが、いちおー。。汗。)

>NKさん
コメントありがとうございます。
遠藤周作追悼ミサは5月20日に長崎の大浦天主堂というものですね、ぜひミサを捧げたいところですが、ちょっと難しいかもしれません。ぜひ、私の分もお祈りをお願いします。
機会がありましたら、教会にもお越しください。今後ともよろしくお願いします。

流石埜魚水です、初めまして。今回、熊井啓監督の「深い河」をもう一見ました。私も本好きなので勿論、遠藤周作の原作も読みましたよ…。でもまだ印度には行った事がありません。

「深い河」はまだ DVDがリリースされていませんので、もう一度この作品を見たいとあちこち探して、漸くツタヤの棚でVHSを1本見つけました。

早速にパソコンへ映像を録画・保存しました。ブロクに添付する写真は、一眼レフのデジカメで撮って、トリミングしました。まあまあーの出来映えかな…。

8/15の終戦記念日に、私はテレビで「黒い雨」が放映されるとばかり思っていましたが、予想に反してクリント・イーストウッド監督の「硫黄島からの手紙」が放映されていました。がっくりです。

その時から、新しく封切られる映画を次々に紹介するのではなくて、邦画、特に私にとっての忘れられない邦画を頻繁に紹介しなくてはなー、と痛感しました。

新しく封切られる映画を次々に紹介するのではなくて、邦画、特に私にとっての忘れられない邦画を頻繁に紹介しなくてはなー、と痛感しました。

是非とも一度私のブログを覗いて下さい。同じ映画に共感したならば、時々情報交感しましょう。そして読者になって下さい。
コメントいただいたならば、必ず返事を書きます。

> 流石埜魚水さん

コメントありがとうございます。
ビデオならあるのですね。
映画は見たことがないので探してみます。

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    熱心な教師であった作者が敗戦を経験し、生徒たちに教科書に墨を塗らせたことをきっかけに、結核、2重の婚約、婚約破棄、自殺と虚無感だけの人生を歩む。その中で同じ結核患者の幼なじみとであったことから、信仰の道に進んでいく。作者の愛と信仰の歴史を綴っている(なぜかリンク先は旧版です最新版は http://nifty.bk1.co.jp/product/2172918 )。 (★★★★)

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    井上 洋治著: 日本とイエスの顔
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  • 山野上 純夫著: 入門キリスト教の歴史

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